レディ・プレイヤー1(2018)

製作国:アメリ
監督:スティーヴン・スピルバーグ
原作:アーネスト・クライン『ゲームウォーズ』
脚本:ザック・ペン
音楽:アラン・シルヴェストリ
出演:タイ・シェリダン/オリヴィア・クック/ベン・メンデルソーンサイモン・ペッグ 他
★★☆☆☆


オタクも子供もナメている

原作小説は未読ですが、wikipediaの概略を読む限り、かなりハードコアなオタク向け小説のようです。しかし本作は、まるで『E.T.』を連想させるような、子供たちが協力して「悪い大人」――それもかなりデフォルメされた、リアリティの薄い感じの――と、VRゲーム空間「オアシス」を守るために戦うという、如何ともしがたくジュブナイルな感じに仕上がっています。
身も蓋もないことを言えば、オタクも子供も客として取り込みたいからこうしましたということなのでは?と思うんですけど、もしもそうであれば、その両者をナメているとしか思えないほど本作にはちょっと難ありな部分が多いと感じました。劇中の「オアシス」パートでの謎解きはなかなか小技が効いていて感心させられたんですが、「現実」のパートについては、いくらなんでもちょっとひどくないか?というレベルの雑さ。「オアシス」の所有権と莫大な財産がかかっているからとはいえ、そのために平然と殺人を犯す大企業の社長ってのもひどいし、殺人が起きても警察に通報さえしない主人公もひどい。そもそも主人公が何をして暮らしているのかもわからないし、主人公が恋する少女サマンサ(オリヴィア・クック)が属しているコミュニティも何を目的としているのかさっぱりわからない。相当に雑です。
制作側としては「オアシス」に登場するガンダムやらアイアン・ジャイアントやらでオタクだろうが子供だろうが満足するだろうとたかをくくっていたのかもしれませんが、そうだとしたら、やはりあまりにナメてると言うしかない。「オアシス」パートと「現実」パートが組み合わさって『レディ・プレイヤー1』という作品になっているわけですから、こう片手落ちな感じだと観客の、作品への没入が阻害されると思う。というか、僕はまさに阻害されたクチなわけですが。
最後に一点。『シャイニング』の、個人的には最も怖ろしいシーンだと思っているあるシーンのほとんど全部をギャグに使っているのはどうなんだろうか。あの作品をすでに観ている人なら問題はないですが、本作を観て興味を持ち、初めて『シャイニング』を観た人は、問題のシーンを観ても、もう恐怖を感じることなどできないんじゃないかと思う。僕はいわゆる「ネタバレ」には寛容なタイプですが、これはちょっとどうかと思いました。