霊的ボリシェヴィキ(2017)

製作国:日本
監督:高橋洋
脚本:高橋洋
音楽:長嶌寛幸
出演:韓英恵長宗我部陽子/巴山祐樹/高木公佑/近藤笑菜 他
★★★★★


「魔」が射す映画

死刑囚の凄惨な最期・災害による死者の夢・裸足の女幽霊・山の稜線を這うもの・「妖精写真」・神隠し・謎の手紙・生きた人形・火刑にされた女・チェンジリング・逮捕されなかった殺人者・何度捨てても帰ってくる数珠・異界への生贄・「光の子」…。
禍々しくも、相互に関連のない、断片的なイメージを集積していくことで、見えない/理解しえない/名付けえないものを現世に呼び込み、「因果」ではなく「共鳴」によって語りえない恐怖を語ろうとする大いなる試みとしての映画。
数人の男女が、録音機器だらけの妙な施設で、自らの「死」にまつわる体験談を話す「だけ」と言ってもいいシンプルな構成ながら、まさに「霊的」としか言いようがない雰囲気がどんどん高まっていくのが文字通り体感できる。ちなみに出演者は全員(いい意味で)怖い顔の俳優ばかりで、間違いなくこの映画に必要不可欠と思われる陰鬱な空気感を醸成するのに貢献しています。また「脚が不自由な女」や「何を目的にしているのかわからないセミナー的集団」など高橋洋が過去の作品からこだわっている要素もバッチリでファンなら思わずニヤリとしてしまうこと請け合いです。
「百物語」のように、それぞれのエピソードが語られるうちに偶然が偶然でなくなり、終盤、一気にシンクロして、「魔」が訪れる瞬間がついにやって来たと思いきや、急転直下訪れるカタストロフ。しかし、これは終わりの始まりにすぎない…という絶望的なエンディング。まさに完璧。「恐怖映画」が好きだと自認する方ならば必見と申し上げます。