カリフォルニア・ドールズ(1981)

製作国:アメリ
監督:ロバート・アルドリッチ
脚本:メル・フローマン
音楽:フランク・デ・ヴォール
出演:ピーター・フォークヴィッキー・フレデリックローレン・ランドン 他
初公開年月: 2012.11.3(ニュープリント版)
★★★★★


戦う君の歌を戦わない奴らが笑うだろう

かつて、女子プロレスが一世を風靡した時代があった。「ビューティー・ペア」とかキューティー鈴木とか、まるでアイドルのように扱われる選手たちを続々と輩出し、現在のAKBのようにファンにキャーキャー言われていたのである。今時の若いモンには想像すらできないとは思うが(老害的発言)。
しかし、当時の僕はと言えば全然興味が持てなかった。もともとプロレス自体にそんなに惹かれなかったということもあるが、失礼な話、正直「色物」と感じていて、なんでそんなに熱狂できるのかと、たまにテレビで見かけても冷めた目で見ていた。
さて、本作は、その女子プロレスの世界で生きる「カリフォルニア・ドールズ」=アイリス(ヴィッキー・フレデリック)&モリーローレン・ランドン)と、二人のトレーナー兼マネージャー・ハリー(ピーター・フォーク)の物語である。上記のように、「女子プロレス=色物」という固定観念が根強く残っていた僕は、観始めてしばらくの間は、彼女たちが何故女子プロレスの世界に身を投じたのか、ということが一切説明されないこともあって「そもそもなんでこんな事に人生賭けちゃってんの?」という身もフタもない疑問が頭の片隅にもたげてしまっていた。
しかし、だ。なんでプロレスをやっているのかはわからないが、それでも彼女たちがハリーのボロ車でドサ周りを続ける姿を観ているうちに、そんなことはどうでもよくなってきたのである。とにかく、この人たちは必死で女子プロレスの世界での成功を追いかけている。隣室の音がまる聞こえの安いホテルを転々とし、興行主にはファイトマネーをケチられ、時にはストリップまがいの泥レスをやらされて観客の嘲笑に晒されても、彼女たちは諦めない。その必死さ加減が、画面からグイグイと伝わってきて、気がつくと僕は、彼女たちと一緒に一喜一憂していた。
そして、苦労の甲斐あって、ついに彼女たちは晴れの大舞台での試合のチャンスをつかむのだが、ここからが凄い。
アイリスは、件の試合のマッチメイクの権利を握る悪徳興行主(バート・ヤングが好演)にいわゆる「枕営業」を仕掛けて、見事に試合出場の権利を勝ち取る。一方、ハリーは、試合のための衣装その他の経費を稼ぐために賭場でイカサマを働き、そうして得た金で、選手入場時のオルガンを弾くおっさんや客の子供たちを買収して、会場全体を「カリフォルニア・ドールズ」一色に染める演出を展開するのだ。
嫌悪感を持つ人もいるだろう。いくらなんでもやりすぎだと思う人もいるだろう。でも本当に人間が切実に何かを叶えたいと思った時、どうしても「勝ち」に行きたいと願った時、なりふりなんか構っていられないのが真実だと思うのだ。プライドも何もかも投げ打って戦う彼女たちを誰が責められるのか、誰が笑えるというのか。
これは、女子プロレスについての映画ではない。必死に人生を戦う人間についての映画なのである。
今、戦っている人、必見。