まほろ駅前多田便利軒(2011)

製作国:日本
監督:大森立嗣
原作:三浦しをん
脚本:大森立嗣
音楽:岸田繁
出演:瑛太松田龍平片岡礼子大森南朋 他
初公開年月:2011/04/23
★★★★☆

この作品は(僕にとっては)ファンタジーです。

まず、最初にハッキリと書いておきたいのですが、本作はとても良い映画だと思います。「人はやり直せるのか」という、特に今という時代に誰もが問いたいことをテーマにして、力強く「イエス」と言っている、そんな作品であって僕は不覚にも涙しました。
かと言って、決してお涙ちょうだいの安直な内容ではなく、むしろ「21世紀の傷だらけの天使」と呼びたいような軽さと切なさが同居した作品です。松田龍平瑛太の事務所兼住居に、ある日突然転がり込んできてから始まるという、男が男のお尻の穴におちんちんを入れたり出したりすることを思い浮かべては鼻息を荒くするタイプの女性の方たちの大好物な感じのお話ではあるのですが、僕が観た限りでは、そういう妄想の入り込む余地のない清々しい映画となっており、大変気に入りました。
しかし、ゲイではない男性同士の、このような美しい同居生活が現実に成立するとは、僕にはどうしても信じられない、というか有り得ないとさえ思ってしまうのです。
「いや、そんなことはない。現に俺たちは同居してるぜ」という人も、広い世間にはもちろんいるのでしょうが、僕にとっては、そんな生活は『ロード・オブ・ザ・リング』と同じくらいファンタスティックです。そして、そんな風に感じる人は実はけっこう多いのではないかと思っているのです。
試しに脳内でシミュレーションしてみましょう。例えば、本作中には、転がり込んできた松田龍平が事務所のソファで毛布をかぶって寝ており、それを瑛太が起こすという場面があるのですが、同様に実際にあなたの部屋に転がり込んできた男を、あなたが起こしたとして、それが例えば「働いたら負けだと思ってる」などとうそぶくようなニート野郎だったら、あなたは居候になることを許可するでしょうか。僕としてはやっぱり労働はしていてほしいので断じて断る。
あるいは「俺は家にいる時はいつもこうだから」っつって、たとえあなたがいても、平然として全裸になって生活する「裸族」の方だったらどうでしょう。僕なら「いや、ちょっと他人のチンコを見ながら生活するのはキツイのでお断りします」とハッキリ言うと思います。
あるいは百万歩譲って、まあ話してみたらいい奴だし、意気投合もしたし、ひと月くらいなら同居してみてもいいか、と思ったとして、その男と、やはり本作中にあるように一緒に銭湯に行ったとします。そこで隣に座ったそいつの股間のアレが平常時で全長30cmだったら、あなたはどうしますか?
僕なら、銭湯から出たら間髪を入れず「やっぱり無理」と言い放ち、有無を言わさず追い出すでしょう。もちろん理由は言いません。これはプライドの問題です
きっと、ここを見てくれている全男性が、この気持ちはわかってくれると思うのですが、どうでしょうか。

※2023年6月18日加筆修正