グラン・トリノ

俳優イーストウッド・最後の花道(?)

監督:クリント・イーストウッド
脚本:ニック・シェンク
音楽:カイル・イーストウッド/マイケル・スティーヴンス
出演:クリント・イーストウッド/ビー・ヴァン/クリストファー・カーリー 他
ストーリー:妻に先立たれた孤独な老人ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は、大事にしている72年製フォード車グラン・トリノを整備することを唯一の楽しみとする、退屈な余生を送っていた。そんなある日、彼は、隣に住むモン族の少年タオ(ビー・ヴァン)が不良少年のグループにからまれているのを助ける。


イーストウッドが、自分の主演・監督作で、自ら演じる主人公の最期をここまでストレートに描くのは、もしかすると本作が初めてではないだろうか。しかも、ちょっとひくくらいにナルシスティックな死にざまである。いくらなんでもカッコつけすぎだろう……と内心呟いてしまったくらいだ。
ストーリー展開から鑑みるに、主人公が、ああいう形で死ぬことがベストであると判断するのは仕方がないことのように思える。しかし、自己陶酔的である感は否めなかった。
深読みするなら、主人公が少年に「未来」を与えるために我が身を犠牲にしたように、俳優としてのイーストウッドをスクリーンの中で葬ることで、彼は自らのポジションを後進に譲った、ということなのかもしれない。言わば「最後の花道」としての作品だった……ということであれば、あれくらいのナルシスな演出も許されるのかもしれない。