チェイサー

暴走する「韓流ノワール」の傑作

監督:ナ・ホンジン
脚本:ナ・ホンジン/イ・シンホ
音楽:キム・ジュンソク/チェ・ヨンラク
出演:キム・ユンソク/ハ・ジョンウ/ソ・ヨンヒ 他
ストーリー:元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)が経営するデリヘルでは、最近店の女の子たちが相次いで失踪していた。ある夜、彼は、彼女たちが最後に会ったと思われる客の電話番号が同じである事に気づく。そして、その番号は先ほど無理やり駆り出したデリヘル嬢ミジン(ソ・ヨンヒ)の客とも一致していた。やがてミジンとの連絡が取れなくなり、心配になったジュンホはミジンの行方を追うのだが……。


極めて直線的な映画である。ハ・ジョンウが演じる連続殺人犯ヨンミンを最初から疑い、憎悪を糧に執拗に追い続けるジュンホには全く迷いがない。ヨンミンもまた、己れの衝動に忠実に殺人を繰り返し、一切逡巡しない。
この二人の行動に牽引されて、物語もまた一直線に、猛々しく進行していく。その随所で、金づち、ノミ、パイプ椅子(!)などによる観客の痛覚をダイレクトに刺激する暴力描写が炸裂し、物語を加速させる。
はっきり言って、好き嫌いの分かれる作品だと思う。特に薄幸のデリヘル嬢ミジンの、あまりにも不幸すぎる最期には嫌悪感を抑えきれない人も多いだろう。しかし、彼女の犠牲があってこそ、ジュンホの憎悪に更なる加速がかかり、物語のクライマックスへの起爆剤となっているのである。
憎悪と暴力を推進剤として、ラストまでひたすら暴走する禍々しい映画。それがこの作品だ。パク・チャヌクに次ぐ堂々たる「韓流ノワール」の継承者が現れたことを喜びたい。