アタック・ザ・ブロック(2011)

製作国:イギリス
監督:ジョー・コーニッシュ
脚本:ジョー・コーニッシュ
音楽:スティーヴン・プライス
出演:ジョディ・ウィッテカー/ジョン・ボイエガ/アレックス・エスメイル/ニック・フロスト 他
初公開年月:2012/06/23
★★★☆☆


健康優良不良少年@ロンドン

南ロンドンの小汚い低所得者向け公営団地に住む、黒人の少年モーゼス(ジョン・ボイエガ)率いる少年ギャング五人組が、深夜の路上で帰宅途中の看護師・サム(ジョディ・ウィッテカー)からカツアゲしている最中、突如として隕石が落下。モーゼスは、隕石の中から出てきたと思しき奇妙な生物を勢いあまって殺してしまうのだが、その後、続々と落下してきた隕石からは、モーゼスが殺した生物より遥かに凶暴な、真っ黒いゴリラのようなエイリアンが出現。はじめはゲーム感覚で「エイリアン狩りと洒落込もうぜ!」というノリだった少年たちだったが、逆にエイリアンに追われる立場となり、行きがかりで行動を共にすることになったサムと共に、団地内で命懸けの攻防戦を繰り広げる羽目に陥ってしまう。
さて、この作品、とにかく少年たちの面構えが大変にイイ。特に主人公・モーゼスの「ホントに十代か?」と疑いたくなるほどにクールな表情が素晴らしい。またナンバー2格の「ペスト」(アレックス・エスメイル)の、どんな状況でも減らず口を叩き続けるふてぶてしさも最高。まさに『AKIRA』の金田たちを彷彿させる「健康優良不良少年」っぷりなのである。
とは言え、所詮はまだまだガキなので、洒落も倫理も法律も全く通じないエイリアンに容赦なく仲間を殺されて、さすがの悪ガキたちもすっかりビビりあがる。しかし、ふとした事から、今回の事態の原因が、ある意味で自分であることに気づいたモーゼスは、一生一代の賭けに打って出ることになる。
どん底貧困層の家庭に生まれ、将来の夢と言えば、団地内を仕切るヤクの売人に正式に身内として認められることくらいしか思いつかないような環境で育ち、当然の成り行きで、ギャングと言えば聞こえは良いが、単なるいきがったチンピラでしかない存在になってしまった少年が、エイリアンの襲来という異常な状況下で、生まれて初めて仲間に対する責任に目覚め、そのために命を賭ける決意をするに至る。この時点で、この作品は単なるSF映画ではなく、ある少年の成長を描く物語なのだということが明確になる。
そして、感動的なラスト。そこにいるのは、もはやただのチンピラではない。自分のケツを、きちんと自分で拭いた「男」なのである。是非、十代の男子に観て欲しい作品だ。