ゴースト・イン・ザ・シェル(2017)

製作国:アメリ
監督:ルパート・サンダーズ
脚本:ジェイミー・モス/ウィリアム・ウィーラー/アーレン・クルーガー
音楽:クリント・マンセル/ローン・バルフェ
出演:スカーレット・ヨハンソンビートたけしジュリエット・ビノシュ桃井かおり 他
★☆☆☆☆


ノー・ゴースト・イン・ザ・シェル

スカーレット・ヨハンソンが演じる本作の主人公「ミラ・キリアン少佐」が、実は自分の人格は模造されたものではないのかと疑いを抱くという導入部は(なぜスカーレット・ヨハンソンがキャスティングされたのかという点についての上手い理由付けにもなっていて)良いと思うんですが、結局その疑問は、少佐の「本当の自分探し」の動機としてしか扱われず、全体を通して観れば、突っ込みどころ満載の脚本のそこかしこに劇場版アニメ第1作(『攻殻機動隊』)と第2作(『イノセンス』)およびテレビシリーズの具体的なシークエンスの模倣や、登場したキャラクターやメカやガジェットを詰め込んだ――いわばリミックスした――世にも奇妙な作品になってしまっています。
どういうことか少々詳しく説明すると、例えば『イノセンス』に登場した、あの目の部分がパカッと開くサイボーグ検視官のおばさんを出したいがために、検視官が登場するシチュエーションを作るとか、テレビ版の「芸者ロボット」を出したいがために料亭のシークエンスを作るとか、そういう本末転倒な脚本の作り方をしたとしか思えないんですよ。『攻殻機動隊』の、ゴミ清掃車の乗務員を利用した電脳ハッキングにからんで登場した、光学迷彩のレインコートを着込んだ暗殺者も全然違う文脈で登場して少佐とバトルするんですが、そこも『攻殻』でのそれのほぼ完コピでしたからね。とにかく『攻殻』・『イノセンス』・TVシリーズのあれこれをやりたいがために、こういうストーリー展開にしたという不自然さを強く感じました。
それにしても「ミラ・キリアン少佐」は実は「草薙素子」だった――という所で留まらず、その「草薙素子」さえもまた、もしかしたら模造人格かもしれない、という方向に話を持っていけば――それこそ『攻殻機動隊』での「少佐」の苦悩の根源であり、同作のテーマでもあった訳ですから――うまくすれば、“「人形使い」が存在しなかった場合の、もうひとつの『攻殻機動隊』”のようにも作れたかもしれないのに、そういう方向性を深掘りする気は本作の制作陣は持ち合わせていなかったようで、全く惜しいとしか言いようがありません。
まあ、一言で言うなら、リメイク元の持つ「魂(ゴースト)」を失ってしまった抜け殻のような映画でした。