フリー・ファイヤー(2016)

製作国:イギリス/フランス
監督:ベン・ウィートリー
脚本:エイミー・ジャンプ/ベン・ウィートリー
音楽:ベン・ソーリズブリー/ジェフ・バーロウ
出演:ブリー・ラーソンシャールト・コプリーキリアン・マーフィアーミー・ハマー 他
★★☆☆☆


思うに必死さが足りない

人間は1発や2発、銃で撃たれてもなかなか死なないものなのだという点に着目して、ひたすらそのリアリティにこだわって作ってみた、という根性は評価するけれども、如何せん面白くないんですわ。序盤の銃撃戦でほとんど全員が重軽傷を負ってゴロゴロと地べたに転がってしまい、その状態で、お互いに罵り合ったり、たまに撃ち合ったりという絵面は、最初は新鮮なんですがすぐ飽きる。
本作の監督も、それだけじゃ間がもたないことは承知していて、敵でも味方でもない、第三の謎の狙撃者を登場させてみたり、舞台となっている廃工場に突然かかってきた電話を誰が取るかの攻防戦を展開させてみたり(ここはなかなか面白かったです)、いろいろやっているんですが、総体的に見れば、やっぱり退屈。そしてだんだん腹も立ってくる。なんでお前ら、そんなに呑気なんだ? いや、今にも死にそうなのに、つまんないことでダラダラ口喧嘩とかやってるバカどもを観て笑ってほしいという演出意図なんでしょうけども、やっぱりもっと生き延びるために必死になるのがこういう状況下の正常な人間の反応だと思うんですが、なんでそこはリアルにしないのか。
リアルと言えば、いくら廃工場とは言え、ボストンという大都会の港湾地区にあるのに、工場内であんなに派手に撃ち合って、ガス爆発まで起こしておいて、事態が収束するまでに警察が来ないなんて、それもありえないだろうと思うし、どうもリアリティにこだわる所が偏りすぎちゃいないかと。
時代設定を70年代にしているのは、登場人物が携帯電話で助けを求められないようにするためなんでしょうが、それは良いとしてこの映画、舞台設定を間違えたと思います。例えば荒野のど真ん中にあって、周囲に人家など一軒もなく、銃声がしても通報されようもないような建物を舞台として、そこで相手方の全員を殺さないと生きて帰れないような事態に陥る(どちらか一方の連中が乗ってきた車が故障して、使える車が一台しかなくなるとか)ようにしたら、全員もっと必死にならざるを得なくなり、より面白くなったのではと愚考しました。