アシュラ(2016)

製作国:韓国
監督:キム・ソンス
脚本:キム・ソンス/キム・ジョンス
出演:チョン・ウソン/ファン・ジョンミン/チュ・ジフン/クァク・ドウォン 他
★★★☆☆


マッド市長 怒りのデス市政

一言でいうと『仁義なき戦い』公務員版 in 韓国という感じの作品。公務員のくせにヤクザ顔負けの悪人たちが、マウントの取り合いに命を賭ける地獄絵図が終始展開します。
しかしながら「善」の側にも「悪」の側にも負け犬として扱われ続けた男が最後の最後に己の矜持のためにやけくその逆襲に打って出る「男泣き」の映画であることも間違いありません。
また、立場が上の者にはおもねり、下の者は侮蔑し、平然と殴ったり蹴ったりする縦社会のいやらしさ・救いのなさが徹底的に描かれている点で、優れた現代社会批判となっている作品だとも思います。
しかしですね、ファン・ジョンミン演じるパク・ソンべ市長が結局すべてを持っていってしまうんですよ、面白すぎて。この映画で一番輝いているのはこの人です。素手喧嘩(すてごろ)に持ち込まれたらトランプ大統領も泣いて謝ること請け合いの凶暴さと平気で人間を使いつぶす冷酷非情さを併せ持つ超危険人物。最初のうちこそ「サイコパス」かと思いきや、あまりのでたらめぶりに「あ、『サイコパス』から『パス』を引いた人や」としか思えなくなってくるこの人がいったいどうやって市長にまでなったのか。それとも市長になったあとにおかしくなったのか? いったい何がどうしてああなったのか、全く描かれないのでわからないんですが、あの、ことあるごとに浮かべる狂った笑顔を見ると、人間、ああまで人間性を失ったら逆に気持ちいいに違いないと感じます。
むしろ、この市長を主人公にしたら、もっと面白かったかもしれないとさえ思ってしまうほど、とにかく市長が最高すぎて、他の役者が全員喰われてしまっている。それにしても「市長」という役職の人物があんなに(どす黒く)輝く映画が未だかつてあったでしょうか?