殺しのはらわた

驚愕の「純粋殺し屋映画」

「悪」を抹殺することを目的として結成された暗殺集団。そのボス(嶋田久作)に、ある日訪れた女(藤田陽子)はボス自身の暗殺を依頼した。何の動揺も見せずに依頼を受けたボスは組織のメンバーに自分自身の暗殺を指令する。期限は一ヶ月。こうして殺し屋同士の死闘が始まった……。


5〜6歳くらいの男の子の額に、ポコッと銃弾の貫通口が開いている。
チラシに大きく使われたこのスチールを見た瞬間、「この映画、ただ事じゃねえ……」と直感した。
期待は裏切られなかった。
暗殺のターゲットとなった嶋田久作は、いつものように自宅に帰宅すると、まず息子を、次に妻を、いずれも額を撃ち抜いて殺す。もちろん人質にとられることを防ぐためである。
案の定、その直後、自宅に組織の殺し屋が現れるが、忍び込もうとした瞬間、仕掛けられた爆弾によって爆死する。
それからも殺し屋たちは次々に嶋田久作に襲いかかるが、いずれも逆襲され、命を落としていく。
そして、ついに組織のナンバー2との一騎打ちとなる。ナンバー2の義手に仕込まれた銃によって、万事休すかと思われたが、ナンバー2自身の油断によって、嶋田久作はからくも生き残る。
無人となった組織のアジトで、ひとり、依頼者の女を待っていた嶋田久作は、依頼を完遂できなかったのかと迫る女に、「私の組織は依頼を必ず遂行します」と言い残し、自らの頭を撃ち抜くのだった。
完璧である。殺しを職業とする人間の論理のみがパーフェクトに貫かれたストーリーだ。タブーとか道徳とか常識とか命の価値とか、そういった「不純物」を一切排した結果、誕生した「純粋殺し屋映画」。必見。
……とはいうものの、このアンモラルにも程がある傑作を見損ねた人、絶対テレビで放映できないしDVDにもならないらしいので、ご愁傷さまでした。