逆徒(2017)

製作国:日本
監督:小林勇貴
脚本:小林勇貴
臓器提供:西村映造
出演:牧野慶樹/梅本佳暉/赤池由稀也/中西秀斗 他
★★★☆☆


無法都市・富士宮でホラーは成立したか

2017年11月8日、渋谷アップリンクにて鑑賞。
本作のあらすじは、観る前に知っていたんですが、どうも不死身の殺人鬼的な奴が暴れまわる系統のホラーっぽい感じだったので、そこがちょっと心配でした。
例えば、凶悪な麻薬組織が跳梁跋扈している真っ最中のメキシコに、何かの間違いで「13金」のジェイソンが登場したとしても、いつものように活躍する暇もなく、ギャングたちにバラバラに切り刻まれて埋められるか、コンクリ詰めにされて海の底に沈められるかで、あっという間にジ・エンドですよ。だとすればメキシコ同様の無法都市・富士宮の不良たちの世界ではホラーは成立しないのではないか? と危惧したわけです。
で、実際観てみると、リンチされて殺された後に「逆徒」として甦った主人公・ヨシキ君は、復活早々タバコをふかしたり、カーチェイスを繰り広げたり、ウンコに伝言添えて監禁場所から逃亡したりと、およそ「不死身の殺人鬼」なんて感じではない。単に体が滅茶滅茶丈夫な不良にしか見えません。
しかし、じゃあ怖くないのかというと決してそうではないんですね。復活したヨシキのせいで、彼をリンチした二つのグループが抗争状態に陥って、それを何とか収めようと双方のボス同士が互いに50万払ってチャラにすることにするという展開になるんですが、これ、単にお互いのグループの下の奴らから意味なく50万搾取するっていうことでしかないわけです。でも後輩の子たちは先輩には逆らえないしバカだから乗せられて暴走する、と。つまりヨシキの復活によって、無意味な暴力の連鎖反応が呪いのようにどんどん拡大していくわけで、その救いようのなさが極めて恐ろしい。
その上、基本はヨシキの復讐譚なのに、クライマックスの刺殺シーンもラストシーンもカタルシスゼロ%で、つくづく「陰惨な映画を観たなあ」と思わされました。してみると本作は「ホラー」としてきっちり成立していたのだと言えると思います。