2006年ベストテン

あけましておめでとうございます(全裸で)。
さて、今年一発目の記事では、ありがちですが、2006年中に公開された作品(で僕が観た中から選んだ)ベストテンを(全裸のままで)発表いたします。


第1位 トゥモロー・ワールド
原因もさっぱりわからぬままに未来への希望が奪われたかと思うと、一切の説明もなく突然かすかな「希望の種」のようなものがひょっこり現れる。この映画で描かれる世界は、まるで我々が生きる現実そのものだ。その絶望に覆われた世界の中で、ただ一つの「希望の種」を守る努力が最後まで続けられる。その営為自体がすなわち「希望」なのだと、この作品は語っているように思う。


第2位 ミュンヘン
同胞の復讐のために始められた正義の任務だったはずが、いつのまにやら世界を股にかけた殺し合いの地獄巡りに変貌。国家が謳う「平和」だの「大義」だのという言葉が如何に虚しいものかを、ラストに映る世界貿易センタービルが象徴しているようだ。


第3位 Vフォー・ヴェンデッタ
1984』的独裁国家と化したイギリスに、変なお面の男が、たった一人でファック・オフ! 『マトリックス』シリーズが第2・3作で忘却してしまった管理社会への憎悪と反逆のメッセージが本作で復活&大爆発。ナタリー・ポートマンのボーズ頭もグー。


第4位 ホテル・ルワンダ
人間がどこまで非人間的になりうるのかという恐るべきテーマの一大実験場と化したルワンダで、ただ一人、ホテルマンとしての職業倫理に従って行動し続けることで結果的に人間としてあり続けるドン・チードル。その目に常に湛えられた諦念が痛い。


第5位 グエムル・漢江(ハンガン)の怪物
男はつらいよ』ミーツ『アリゲーター』という異種格闘技テイストの新種の怪獣映画。文字通りのバカ家族と怪獣のガチンコ対決が全編にわたって繰り広げられるという通常コメディにしかならない設定(例『トレマーズ』)が、手に汗握る大スペクタクルとして楽しめてしまうというマジカルな作品となっているのは、ひとえに監督の立ち位置が、バカ家族=巨大な暴力に立ち向かう庶民の側にあるが故であろう。クライマックスのソン・ガンホに感情移入できない人はいないはず。


第6位 ユナイテッド93
死にたくて仕方がないテロリストたちと、生き延びたくて仕方がない乗客たちが、土壇場で、それぞれの神に祈る。「神ってなんなんだ?」と思わずにはいられない。僕にとってこの映画は、そんな疑問を突きつけてきた映画だった。


第7位 インプリント〜ぼっけえ、きょうてえ
一言で言って、怖いというより「酷い」映画。こんなもん、いくらアメリカでも、テレビで放送できるワケねえだろうという描写のオンパレード。観客に確実に「痛たたたっ」と思わせるイヤな拷問が展開するは、兄と妹の近親相姦コジキは出てくるは、水子が川を流れまくるは。そして最後には、これまたイヤーなフリークスも登場。歪みまくった愛憎も絡んでいるだけに始末に負えない、まさに「愛・地獄博」の様相である。若い婦女子には、まったくお勧めできない、ある意味ハードコアな傑作。


第8位 レディ・イン・ザ・ウォーター
M・ナイト・シャマランは「物語」というものに執着し続けている映画作家である(断言)。思えば『シックス・センス』は幽霊の語る物語を聞く少年の話であった。『アンブレイカブル』はアメコミの世界が現実化する話だったし、『サイン』では偶然というものがありえない「物語化」した現実を、『ヴィレッジ』では19世紀のアメリカという「物語」を生きようとする人々を描いていた。そして本作では、とうとう「物語ること」そのものをテーマにしてしまった。次はどんな手で行くつもりなのか。まだ引き出しはあるのか?


第9位 リトル・ミス・サンシャイン
そろいもそろって欠陥だらけのある家族が、娘のミスコン出場のためにオンボロバスでカリフォルニアまでの旅に出る。途中で死人が出たりしながらも(!)何とかギリギリでたどり着くワケだが…。昨年観た中で「愛すべき」という言葉が一番ぴったりくる映画。負け犬家族の意地がやけくそ気味にはじけるクライマックスが爽快。


第10位 時をかける少女
昨年は邦画も結構観たのだが(ちなみに23本)、いざ洋画も含めたベストテンとして考えてみたら、これしか残らなかった。若い女子が笑ったり泣いたりわめいたり転げ回ったりしているだけで映画は立派に成立するという見本。また、若い登場人物たちの生理に合わせたかのような映画のスピード感が僕には非常に心地よかった。

以上。(白)