LOOPER/ルーパー(2012)

製作国:アメリカ/中国
監督:ライアン・ジョンソン
脚本:ライアン・ジョンソン
音楽:ネイサン・ジョンソン
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィットブルース・ウィリスエミリー・ブラント 他
初公開年月:2013/01/12
★★☆☆☆


博士と助手ライジン

注:本レビューをお読みになる前に、これこれを合わせてお読みいただければ幸いです。また、ネタバレがありますので、できれば鑑賞後にお読みいただくことをお薦めします。


博士「いやー、案外簡単に作れちゃったなー。タイムマシンちょろかったわー」
助手「まさか、あんたごときインチキ科学者をクルマで轢いてそのまま放置したような人間のクズがタイムマシンを発明しちゃうとはねー。H・G・ウェルズも草葉の陰で号泣ですよ」
博士「うんうん、普段なら激怒するところだが、今は気分がいいからキミの罵詈雑言も許そう。ところで、とりあえずタイムマシンの利用法の参考になるかと思って『LOOPER/ルーパー』を観てみたが、そういう意味では全く役に立たなかったな。あの作品内でタイムマシンを運用する犯罪組織は、相当頭悪いぞ」
助手「へえ、そりゃまた何故に?」
博士「まず、何故わざわざ『ルーパー』なる殺し屋を用意する必要がある? あの作品中のタイムマシンは、観た限りでは、時間は30年前までしか遡れないにしても、場所はどこにでも設定できるようだ。ならばターゲットを焼却炉の中にでも直接送り込めば良いではないか。これならルーパーに報酬を払う必要がなくなるし、関係する人間も減らせて機密性も高まるし、イイことづくめである。
それと、『ルーパー』を処分するために、30年後のそいつを現在のそいつ自身に殺させる意味もわからん。誰だって、30年後に自分が自分に殺されることが確定するのを知るなんて御免である。そのショックのあまり、そいつが30年経たないうちに途中で自殺してしまったらどうなるのか? そういうややこしいことが起こらないように、わしなら『ルーパー』を殺すなら、必ず別の『ルーパー』に殺させるようにする。要は当人が知らなければ済む話だからな。
ていうか、過去に送り込んで邪魔者を殺す以外にタイムマシンの活用法を思いつかないのか? 例えば30年後の犯罪組織を束ねて、独裁的に支配しているという『レインメーカー』を今のうちに殺しちまえばいいなんてのは、ブルース・ウィリスじゃなくて、それこそ当の犯罪組織の人間が思いつくべきアイデアである。他にも株価操作とかマネーロンダリングとか、いろいろできることがあると思うんだが、何というか非常に禁欲的な犯罪組織であるな」
助手「腰が引けてるんですよね。未来に変化を与えるようなことは極力したくない、という姿勢が見える」
博士「そもそも、主人公含め、関わっている当人たちも、よくわかっていないからじゃろうな。ダイナーで、ブルース・ウィリスとJGLがタイムトラベルについて話すシーンで、ウィリスが『複雑すぎてよくわからないんだ!』と逆ギレするのには笑った」
助手「よくわかっていないくせにやることは大胆でしたよね、あの人」
博士「だいたいウィリスがJGLにおとなしく殺されなければ、彼が救いたいと願う、あの中国人の妻には恐らく出会うこともできないんじゃが、それさえも理解できていないから、諸悪の根源と信じるところの『レインメーカー』殺しに暴走してしまうわけじゃ。それにJGLが引きずられて止むなく行動するという、まあ、言わばバカが牽引するドラマであって、どうも面白くなかった」
助手「その評価には同意なんですが、それにしても大丈夫なんでしょうか? タイムマシンなんて作って」
博士「ん? どういうことかね」
助手「ほら、それこそSFにはよくあるじゃないですか。何しろ歴史が変えられるかもしれない危険な発明ですからね。だからタイムマシン発明者のところに『タイム・パトロール』的な人がやって来て、記憶を改竄されたりとか…」
博士「それはSF的というより、藤子・F・不二雄チックなS(少し)F(不思議)的な発想じゃな。そんなマンガみたいなことが実際に起こるわけが…」
――と、その瞬間、まさに藤子・F・不二雄チックなタイム・パトロール的人物が出現し、博士と助手の頭部に奇妙な光線を発射した後、タイムマシンを奪って消失する。
博士「…そんなマンガみたいなことが実際に起こるわけがない。ところで何の話だったっけ?」
助手「えーと…だから、もしも『LOOPER/ルーパー』みたいにタイムマシンがあったら何をするかってことですよ」
博士「ププッ、だいたいタイムマシンなんか作れるわけないじゃん、マンガじゃないんだから。相変わらずカラダは熟してるのに頭は幼稚じゃのう」
助手「お前のレベルに合わせてるからな」
博士「なんだと、このメス豚があ!」
二人、便所スリッパでお互いをひっぱたき合いながら、暗転。