テネイシャスD〜運命のピックをさがせ!

ニート・下ネタ・ロックンロール

厳格で保守的な家庭で育ったロック好きの少年JB(トロイ・ジェンティル)は、ある日、ロックの神と崇めるディオ(本人)の啓示を受け、家を飛び出し、ハリウッドを目指す。長い年月の末に、すっかり成長してハリウッドに辿り着いたJBジャック・ブラック)は、街頭でギターを弾くKG(カイル・ガス)と出会い、たちまち彼のギターの腕前に惚れ込んで、二人で「テネイシャスD」というバンドを結成。しかし、いきなりスランプに陥る。そんなある日、二人は『ローリング・ストーン』誌の表紙を見て、歴代のロックスターが全員同じピックを使っているという驚愕の事実を発見。何とかそのピックを手に入れようと中古楽器店を訪れた二人だったが……。


ご存じの方も多いと思うが、ジャック・ブラックは脂ぎった小汚いデブであり、相棒のカイル・ガスはハゲている上に、やはりデブ。しかも二人の役柄は、いい年こいて、いまだにロックに夢中の無職中年バンド(志望)である。/おまけに口を開けば、飛び出してくるのは厨房レベルの下ネタばかり(と言うか劇中では9割方下ネタしか口にしてない)とくる。外見的にも内面的にも本当に残念なコンビとしか言いようがない。/ところが、演奏シーンになると、この二人、異様な迫力があるのである。文字通り吠えるように歌うジャック・ブラックの目は完全に飛んでいるし、カイル・ガスは真面目にギターが超上手いのであった。/彼らは一見、およそ所謂「ロック」には縁遠いように見える。だが、そういう彼らだからこそ、逆に真摯にロックに向き合えるのだ。だってロックってそもそも「世間的に気の毒な人」に勇気を与える音楽だったはずじゃないか? 内容はめちゃくちゃアホらしいが、この作品が間違いなく「ロック映画」である由縁である。/ところでこの映画では、主演の二人が、最近お相撲さんが捕まったことでも有名な、煙を吸うと気持ちよくなる植物を頻繁に使用する。これはレイティングには影響しなかったようだが映倫の基準というのはどうなっているのだろう? 一度聞いてみたいものだ。