裏切りの闇で眠れ

この男、骨の髄から殺し屋

フリーの殺し屋フランクは、パリの闇社会を仕切るクロードに再三、自分の組織に入るように誘われつつ、付かず離れずの良好な関係を築いていた。ところがある日、何者かの密告によってクロードは逮捕されてしまう。
クロードを裏切ったのは誰か? その犯人捜しが、これからストーリーの核になるのかと予想したのだが、その予想こそが裏切られた。それどころかトップの座から滑り墜ちたクロードの跡目を奪うべく、かつては仲間だった者たちがさっそく陰謀を巡らし始める。仁義も忠誠もくそもない。この冷酷さ、容赦のなさにゾクッとさせられる。
陰謀の渦中に巻き込まれたフランクが最終的に下す決断は如何にもこの男らしい。このストイックな男にとっては「友情」や「恩義」などの人間的な感情は意味を持たない。彼が従うのは己の定めた行動基準(「職業倫理」と言い換えてもいい)のみなのだ。
「フリーの殺し屋」という自分の職分を、ついに一歩も踏み外さないスーパークールなフランクを、どことなく若い頃のロバート・デ・ニーロを彷彿させるブノワ・マジメルが好演。女子供にはついていけない、甘さ皆無のフィルム・ノワールである。