THEM<ゼム>

しかし、それは起こった。

2002年10月7日深夜、ルーマニアブカレスト郊外。林の中の一軒家に住む若い夫婦が正体不明の集団に襲撃された。家の中に侵入し、執拗に二人をつけ狙う謎の集団。いったい彼らの目的は何なのか? それは一切明らかにされないまま、二人は次第に追いつめられてゆく。ついに外に脱出した二人だが、追跡はなおも続く。そして衝撃的な結末が待っていた……。
本作は、ホラー映画としては非常に「上品」な部類の作品だ。この映画の二人の監督(ダヴィッド・モロー、グザヴィエ・パリュ)は、血をドバドバ出すことなく観客に恐怖を感じさせるテクニックを心得ている。
だが、ひっかかる点もある。この映画の内容が実話でなかったら、僕は「こんなことが実際に起こる国には絶対住みたくない」と思うほどの恐怖を感じただろうか? 恐ろしく不条理な災厄が現実に起こったということ、それがこの映画の恐怖の源なのではないだろうか。
ダヴィッド・モローとグザヴィエ・パリュの真の実力は、彼らの次回作で判定するべきかと思う。