ICHI

綾瀬はるかの不幸

市(綾瀬はるか)は瞽女(ごぜ)と呼ばれる盲目の女芸人。彼女はある目的を持って一人旅をしている。ある日、市は「万鬼党」という無法者集団のチンピラたちにからまれるが、居合わせた十馬(大沢たかお)という浪人が助けに入る。しかし、十馬はなぜか刀を抜くことができず、その間に市は仕込み杖から抜いた剣でチンピラたちを見事に切り捨てる。やがて二人は、辿り着いた宿場町で、町を仕切る白河組二代目・虎二(窪塚洋介)と「万鬼党」の頭目・万鬼(中村獅童)との激しい抗争に巻き込まれていくのだが……。


まず、この作品の主役に、僕の心の恋人こと綾瀬はるかさんがキャスティングされたことは本人にとっても僕にとっても大変に不幸なことだったと言わざるを得ない。
綾瀬さんは、残念ながら「目が見えない人」に全然見えない。これ、致命的である。杖を突きながら歩いている姿も、普通に目が見える人が、なぜか杖を突きながら歩いているように見える始末。こんな基本的な演技もおぼつかないんじゃ、「座頭市」役なんか百年早い。
殺陣も、それなりの形になってはいたが、本人以上に斬られ役の人が上手いだけと見た。
また、座頭市映画といえばトリッキーなアクション(勝新版で言えば、赤ん坊を空中に投げ上げている間に敵を斬り捨て、また受け止める、など)が「売り」であり、たけし版もその方面に結構頭を使っていたが、本作にはそういう楽しみも全然ない。例えば着物を脱ぐ、と見せかけて敵の目を引き付けておいて、その隙に斬るとか、もっと言えば小池一夫チックに、全裸で温泉内での立ち回りとか……そういう「女座頭市」ならではのアクションが観たかったのだが。
要するに、ちゃんと「盲人」の演技ができて、殺陣もこなせて、さらに必要とあらば「脱ぎ」もOKという女優でなければ、とてもじゃないがこなせないような難役を綾瀬さんに振った制作者側が悪いのである。綾瀬さんは、まあ、それなりにがんばってはいた。そこは認めてあげたい。
しかし『フレフレ少女』といい本作といい、最近の邦画界は、若手女優にムチャ振りするのが流行しているのだろうか。それ、どんな流行だ。
まあ、どんな映画に出ようと僕はいつまでも綾瀬さんを応援するけどね、恋人だから……(涎をたらしながらニヤニヤしつつ)。