2007年度公開映画ベスト10 by 犬温

どうも。休日といえば朝から一升瓶をかき抱き、浮世の憂さを晴らしている「シネパカ」管理人の(白)です。
今日も今日とて、泥酔状態の最中、「犬温」のバカから届いた2007年ベストテン原稿をアップいたしますので、暇がありあまった奇特な方は読んでやってください。
(以下原稿)

寒中お見舞い申し上げます。
「シネパカ」残党の1人、犬温でありんす(ホロ)。
今年も「早く送ってこいよ!」と、朝の8時から酒臭い息で恫喝されたので、半泣き半笑いでベスト10(順不同)を選出させていただきました。
犬温雑記もよろしくね(焦点の定まらない虚ろな瞳で)。

以下、順位なしの50音順です。


アポカリプト
ジュニアチャンピオンコース! 世界怪奇スリラー全集! ジャガーブックス! メル・ギブソン監督が子供の頃に夢中になった古代マヤ文明の本って、きっとこの手のB級で無闇やたらと扇情的でお子様エクスプロイテーションサブカル全集の類に違いない。リアル「リアル鬼ごっこ」はもちろんの事、オープンセットで再現された古代都市の景観にも心踊った。


河童のクゥと夏休み
侠客を河童にする事で股旅人情ものの再生を試みた原恵一監督の、懐の深い、腰の据わった演出力に感服。それにしても不振に終わった興行成績を思うにつけ、もしも『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶハッケヨイ! 河童のクゥと夏休み』みたいな形で制作されていたなら……と夢想しないでもない。ラストシーンのあまりに清冽な川の水面の美しさよ。


グラインドハウス U.S.A.バージョン』
技のロドリゲスと、力のタランティーノ。B級映画のあらゆる要素を最大公約数的にそつなくまとめたのが『プラネット・テラー』なら、B級ならではの退屈と興奮をどちらも極限まで突き抜けてみせたのが『デス・プルーフ』か。


ストレンヂア 無皇刃譚』
今、日本で作るのが最も困難だと思われるシンプルでストレートな時代活劇は、生々流転、諸行無常のビターな味わいだった。「秘宝」を巡る三つ巴の争奪戦というプロットや、様々な剣戟スタイルの混在は、マカロニ・ウェスタン的でもあり、香港・中国の武侠片的でもあり。


『ゾディアック』
傑作と駄作を律儀に交互に撮り続けるデヴィッド・フィンチャー監督の、今回は傑作。連続殺人事件の謎を追ってドロドロのダークサイドにズブズブとはまっていく男達に寄せてしまう、奇妙な共感。調査の過程が絵になってる映画って好きだなあ。


それでもボクはやってない
痴漢冤罪に問われてしまった加瀬亮くんが体験する、恐怖と不条理に満ちた裁判の実態は、自他ともに認める挙動不審で変質者面の僕にとって、とても他人事とは思えない「今そこにある危機」。糸色先生ほどじゃなくても、観終わった人の心に残るのは希望より絶望なのではないかしら?


ピンチクリフ・グランプリ
30年間待ち続けました。知る人ぞ知る伝説のノルウェイ人形アニメーション映画、奇跡のリバイバル上映は『ブレードランナー ファイナル・カット』なんかよりも、はるかに大事件。個人的な感傷を抜きにしても、コマ撮りのミニカー集団が繰り広げる20分にも及ぶレース・シーンの迫力は、近年のCGまみれのレース映画なんか余裕で仏恥義理DEATH。


『ブラックブック』
戦時下のオランダで、ナチス・ドイツへのレジスタンス活動に身を投じた美しいユダヤ人女性。彼女が辿る数奇な運命を描く、といえば聞こえは良いが、そこはほれ、描くのがポール・バーホーベンですから(笑)。監督のガハハという高笑いが終始聞こえてきそうな、下品で暴力的で何もかも全てが過剰な、メロドラマの極北。


プレステージ
世の中には2種類の人間がいる。本作を観てズッコケる奴と、そいつを「まあまあ」となだめる奴だ。おそろしく緻密かつトリッキーな構成で完成度の高い脚本は、まるで精緻な造りの工芸品のよう。完全に常軌を逸したトリックなれど、制作者は観客に対して愚直なまでにフェア。何せファースト・カットで堂々とネタバレしてますから。


ボーン・アルティメイタム
とにかくもう、暴力的なまでに面白かった。今後続編やシリーズものを撮る全ての制作者は「ボーン・トリロジー」をお手本にして欲しい。


その他、意表を衝いてのんきでマイペースな爺さんを演じるアンソニー・ホプキンスが可愛い『世界最速のインディアン』、漫画の実写化はここまでやってこその『300』、巨大ロボが市街地のド真ん中でドツキ合う一点で山ほどある不平不満も許せる『トランスフォーマー』、難儀な男達が奏でるアンサンブルにシビれた『エレクション』、3DCGで立体映画で英雄冒険譚と三拍子揃った『ベオウルフ』等が面白かったです。