再会の街で

事件や事故で家族を失ったばかりの人に向かって「今のお気持ちは?」というようなコメントを求める奴には「答える代わりにお前の左右どちらかの眼球をよこせ」と『ソウ』シリーズの「ジグソウ」ばりの要求をして当然だと思ってますが、何か?
最愛の人を突然奪われた人が感じるものは、背負いきれないほどに大きな悲しみは当然として、さらにその上に怒り・苦しみ・罪悪感・戸惑い・不安と様々な感情が積み重なって生まれた巨大な「混沌」ではないだろうか。そんなものを一体どうやって言葉にしろというのか。
本作でアダム・サンドラーが演じるチャーリーは、その「混沌」に押し潰され、全てを忘れることにした男である。彼は音楽に、ゲームに、台所のリフォームに逃避し続ける。しかし、旧友のドン・チードルと再会した時から、彼の中で何かが少しずつ変わり始める。
この作品は、その彼の遅々とした変化の過程を丹念に追ってゆく。そして、かすかな希望の光が見えたところで終わる。とても淡々とした、清々しい映画である。素直にお勧め。
(白)