マッドゴッド(2021・アメリカ)

監督:フィル・ティペット
脚本:フィル・ティペット
音楽:ダン・ウール
出演:アレックス・コックス 他
★★★★★


俺様の「表現の自由」大満喫映画

僕もTwitterを始めて10年以上経ちましたが、僕がフォローしているアカウントの関心がその方向にあることが多いためか、割と頻繁に「表現の自由」についての話題がTLに流れてきます。最近(といっても昨年の12月)の事例だと、麻雀ゲーム「雀魂」とアニメ「咲-Saki-」とのコラボ広告が「セクハラ」などと批判されて、それに対する批判の声が上がり……というこれまでにもさんざん見てきた状況が繰り返されていた。まあ、そういう広告を見つけては批判する方も、カウンターで批判し返す方も本当にご苦労様ですという感じです。
ちなみに僕は、問題の広告を新宿駅構内で見かけたんですが、特に問題があるとは思わなかった。しかし僕という人間は、例えばその広告が、グラビアアイドルやAV女優が全裸で写っている(ただし局部は巨大な麻雀牌で隠されている)ものだったとしても「問題なし!」と判断するくらいには感覚がマヒしている上にズレているので、そもそもこの手の論争に参加する資格はとてもなさそうです。
しかし、論争には参加できなかろうが「表現の自由」をめぐっていろいろな立ち位置にいる人全てに本作を観てほしいという気持ちはかなりある。なぜなら本作は近年稀に見る“俺様の「表現の自由」大満喫映画”だと思うからです。
思うに商業映画というものは、スポンサーやプロデューサーの意向とか市場調査の結果とかに左右されて、ともすればクリエーターの「表現の自由」は抑圧されがちだろうと思うんです。だが、この作品は違う。巨匠フィル・ティペットが30年かけて(一時中断しながらも)コツコツと、ほぼ自主制作みたいなスタイルで作り上げた作品ですから、恐らく徹頭徹尾、彼自身がやりたいことしかやってない。
しかも少なくとも特撮映画史には必ず名前が残るであろう偉人なのに、世間体とか外野からの批判とか気にしている気配も微塵もない。リミッターを完全に外した想像力を自分の欲望のままに暴走させている。電気椅子みたいな拷問器具に座らされた巨人たちが、電流が流されるたびに痙攣しながら排泄物をドバドバ噴出するとか、頭がおかしい医者っぽいキャラクターが、まだ生きている主人公の腹をメスで切開して両手を突っ込んで内臓を掻き出しまくるとか、下手すりゃ変態扱いされかねない描写の連続。でもやりたいからやるんだよ!という気が狂った気概が感じられる。これこそ「表現の自由」。重ねて言うが「表現の自由」を認める人も認めない人も是非観ろ!