ドライブ・マイ・カー(2021)

製作国:日本
監督:濱口竜介
原作:村上春樹 『ドライブ・マイ・カー』(『女のいない男たち』【文藝春秋】所収)
脚本:濱口竜介/大江崇允
音楽:石橋英子
出演:西島秀俊三浦透子霧島れいか岡田将生 他
★★★☆☆


もしも、この映画の主人公が読売新聞の「人生案内」に投稿したら


[人生案内]不倫をしていた妻が急死

50代の俳優。2年前に突然自宅でくも膜下出血で倒れ、そのまま亡くなった妻のことを未だに引きずっています。
実は妻は生前、たびたび不倫をしていました。自宅で若い男とセックスしているのを目撃したこともあります。しかし、私はそのことについて彼女と話し合ったことはありません。
私たちには娘が一人いましたが、まだ幼い頃に亡くしています。その後、子供を持とうとはしませんでした。また、脚本家だった妻はセックスの後にトランス状態のようになって不思議な物語を語りだすことがよくありました。これらのことが、彼女の不倫に何か関係があるような気もするのですが、私にはよくわかりません。
妻が倒れた日の朝、出かけようとしていた私に彼女は「帰ってきたら話したいことがある」と言いました。しかし彼女が亡くなってしまったために、いったい何を話したかったのかはわからずじまいです。そのこともあって私は妻のことを忘れられないのだと思います。さらに最近、私が演出している作品に私の妻と不倫をしていたらしい俳優が参加してきたりしたこともあり、どうにも落ち着きません。心の整理をつけるためには、いったいどうすればよいのでしょうか。(東京・Y男)


あなたのご相談には、どうも不可解な点があります。まず奥様が何回も不倫をしていることを知り、さらに自宅で現場を見てしまったのに、そのことについて奥様に何もおっしゃらなかったのは何故なのでしょうか。
また、奥様が「セックスの後にトランス状態のようになって不思議な物語を語りだすことがよくありました」とのことですが、あなたは奥様がそういう状態にたびたび陥ることをどのように考えていたのでしょうか。いくらご職業が脚本家だからといっても、どうも不自然ではないでしょうか。
何人もの男と不倫をしたり、セックスの後によくわからないことを言い出したりした場合、まずは奥様がメンタル面に問題を抱えているのではないかと疑うのが常識的な対応ではないかと思われますが、あなたはそういった懸念を抱かなかったのですか?
失礼ですが、あなたはいつからかご自分のことばかり考えて、奥様のことを顧みなくなっていたのではないでしょうか。あなたが不倫について奥様と率直に話し合おうとされなかったり、奥様にカウンセリングや心療内科の受診を勧めなかったりしたのは、奥様のことを心配する気持ちより、ご自身の「妻の言動に理解のある夫」像を壊したくないという気持ちが優ったからではありませんか?
これはあくまでも推測ですが、いつまで経っても自分の方を振り向いてくれないあなたにしびれを切らした奥様は、亡くなられたその日の夜に勇気を出して何もかも告白するつもりだったのではないでしょうか。そうすればあなたは嫌でも奥様と正面から向き合わざるを得なくなるからです。しかし大変残念なことに奥様はお話しになる前に亡くなってしまいました。
あなたの今の状態は、いわば亡くなられた奥様から与えられた罰です。あなたはそれに耐えながら今後も生きていくべきでしょう。
(セックスカウンセラー・死根墓夫)