ラスト・ムービースター (2017)

製作国:アメリ
監督:アダム・リフキン
脚本:アダム・リフキン
音楽:オースティン・ウィントリー
出演:バート・レイノルズ/アリエル・ウィンター/クラーク・デューク/チェヴィー・チェイス 他
★★★☆☆

ジジイになるのも悪い事ばかりじゃない(らしい)

昨年は、奇しくも往年のハリウッドスターたちが、年老いた現在の自分の姿を果敢にさらけ出すような作品が相次いで公開された年でした。3月にはクリント・イーストウッド『運び屋』(2018/クリント・イーストウッド)、7月にはロバート・レッドフォードの『さらば愛しきアウトロー』(2018/デビッド・ロウリー)(これは未見)、そして9月に公開されたのが本作です。
『運び屋』で、身もふたもなくヨボヨボになったイーストウッドが登場した時もショックだったんですが、本作の冒頭、ペットクリニックの待合室にチョコンと座っているバート・レイノルズのあまりにも「おじいちゃん感」漂うルックスもまたショックでした。バート・レイノルズには大して思い入れはないんですが、往年の「精悍」という言葉が服を着て歩いているようだった彼の姿を覚えているだけに、ツラいなあと思ってしまったんですよ。
本作で彼が演じているのは、かつてハリウッドで一世を風靡したものの、現在は一線から遠ざかっている老いた映画スター・ヴィック・エドワーズ。とは言えヴィックはほとんどバート・レイノルズ自身です。劇中に登場する、ヴィックが過去に出演した作品はそのまんまバート・レイノルズの出演作だし、『脱出』(1972)および『トランザム7000』(1977)に出演している若き日の自分自身と「共演」するシーンまであるし。
現実でもバート・レイノルズはハリウッドに忘れ去られた状態だったといっても過言ではないわけだから、ずいぶん自虐的な役ではあるんですけど、決して重苦しくなく、むしろそういう役どころを楽しみながら飄々と演じているという風情で、何だかすごく良いなあと思いました。この人といいイーストウッドといい、ジジイになるのと引き換えに若い頃にはなかったイイ味が出てきたという感があります。
まあ、お話の方はかなり予定調和的で、なるほどやっぱりそうなるよねという感じなんですが、思うに何かの拍子に自分の老後のことを考えてしまい、すっかり暗い気分になってしまったタイミングで観るには最適な作品かと思います。一時的かもしれませんが、たぶん気分が良くなる。で、また落ち込んだら、再度観る。そんな常備薬みたいな作品。