フェイク シティ ある男のルール

キアヌとエルロイの残念な出会い

監督:デヴィッド・エアー
脚本:ジェームズ・エルロイ/カート・ウィマー/ジェイミー・モス
音楽:グレーム・レヴェル
出演:キアヌ・リーヴス/フォレスト・ウィッテカー/ヒュー・ローリー 他
ストーリー:ロサンジェルス市警の刑事トム・ラドロー(キアヌ・リーヴス)は、かつての相棒ワシントン(テリー・クルーズ)が、彼を内部調査部に密告しようとしているという情報を掴むが、当のワシントンは強盗事件に巻き込まれ、彼の目の前で殺されてしまう。


この作品の脚本に参加した作家ジェームズ・エルロイの連作短編集『獣たちの街』(文春文庫)には、本作の主人公と同名の刑事トム・ラドローが登場する。しかし、こちらのトム・ラドローは、電話帳でバンバン容疑者をぶん殴って自供させるという独特すぎる尋問を得意とする暴力刑事であり、本作でキアヌ・リーヴスが演じるキャラクターとは全く違う。だから「同名異人」と解釈すべきなのだろう。
に、してもキアヌ・リーヴスはミスキャストだったと言わざるを得ない。エルロイの、濃厚なノワールの世界の住人を演じるには、キアヌはあまりにも淡泊すぎる。例えば同様にロス市警の腐敗を扱った作品である『トレーニングデイ』におけるデンゼル・ワシントンの獰猛さと比較すると、線が細すぎて精彩に欠けると言わざるを得ない(ちなみに本作の監督は『トレーニングデイ』の脚本を手掛けている)。
ストーリーも型どおりで、エルロイ独特の毒に欠ける。結局エルロイのファンも、キアヌのファンも満足できない残念な出来の作品になってしまった。