ドクター・スリープ (2019)

製作国:アメリ
監督:マイク・フラナガン
原作:スティーヴン・キング『ドクター・スリープ』(文藝春秋
脚本:マイク・フラナガン
音楽:ザ・ニュートン・ブラザーズ
出演:ユアン・マクレガーレベッカ・ファーガソン/カイリー・カラン/クリフ・カーティス 他
★★☆☆☆


オビワン・ケノービVSバンパイア軍団VS幽霊ホテル

本作を観た翌日、僕は以下のようなツイートをしました。

『ドクター・スリープ』をTOHOシネマズ新宿にて鑑賞。ジェダイマスターとその弟子の少女が21世紀の地球を舞台に、悪の吸血鬼軍団と超能力バトルを繰り広げるという内容。『シャイニング』のファンには賛否両論だろうなあ。

なんだか他人事みたいな書き方ですが、実を言えば僕はどちらかと言うと『シャイニング』のファン寄りの人間です。はっきりと「ファン」と言い切れないのは、僕が『シャイニング』に対して抱いているのが「(まさにこの映画の舞台となっている「オーバールックホテル」のような)非常に精巧で美しい建造物」を見た時に抱く感嘆の念に近いから。つまり映画というより、一つの「構造物」としての美しさに魅了されているという感じなんですが、わかりにくくてすみません。
まあ、そういう次第なので、オーバールックホテルを単なるお化け屋敷にしてしまった本作には、どうも嫌悪感が先に立ってしまう。また、そこにいるだけで十分に不気味で怖ろしかった、ホテルに巣くう幽霊たちも、本作ではまるでゾンビみたいな扱いで、なんか冒涜されたような気分にさえなりましたよ。
これらに限らず『シャイニング』では必要最小限に留められていた、殺人や超常現象の具体的な描写が、本作ではてんこ盛りとなっており、なんかこう“アンチ・『シャイニング』”的っていうんですか、そういう意図があるんじゃないか? 原作者のスティーヴン・キングが『シャイニング』を嫌っているのは有名な話なので、もしかすると監督がキング御大に忖度しまくった結果、こういう作品になったんじゃないか?などと邪悪な想像をしてしまう。
でも、そんな裏側があろうがなかろうが映画として面白ければ何も問題はないんですけど、どうも面白くないんですよね。例えば、バンパイアたちが人間の「生気」を吸う場面は、そのまんま犠牲者の口から煙のように出てくる「生気」を吸う。「頭の中を覗かれる」場面では文字通り頭の中にある資料ケースを覗かれる。そういった具体的な描写によって、話がわかりやすいことは確かなんですが、そのように何もかもあからさまに描かれることによって、少なくとも「恐怖」は全く感じられず、つまり「ホラー」にするのは失敗している。かと言って「超能力アクション」の方向に振り切れているわけでもない。そういうどっちつかずの状態になってしまったのが敗因かなと思います。