ザ・ファブル(2019)

製作国:日本
監督:江口カン
原作:南勝久ザ・ファブル』(講談社ヤングマガジン」連載)
脚本:渡辺雄介
音楽:グランドファンク
出演:岡田准一木村文乃山本美月柳楽優弥向井理安田顕 他
★★★☆☆


ファブレてるのか、ファブレてないのか

岡田准一には、ちょっと前から注目していた。何しろカリ・ジークンドー・USA修斗のインストラクターの資格を持っているというガチな格闘技マニアである。「Ⅴ6」のメンバーとしての彼に魅力を感じているファンにとっては、どうでもいいプロフィールかもしれないが、アクション映画好きを自認する僕としては、是非ともその格闘スキルを存分に活かせる映画に出てほしいものだと思っていた。
という訳で本作を観に行ったんですが……正直なところガッカリした。作品としては残念ながらファブレてなかったというしかない。
ただ、主人公を演じた岡田准一については、この人は完全にファブレていたと言ってもいい。テーブルを挟んで向かいのソファに座っている安田顕光石研を瞬時に射殺する(という脳内シミュレーションの)シーンや山本美月が監禁されているゴミ処理場に潜入するために壁と壁の間に腕と脚を突っ張って音もなく登っていくシーンとかね。「すげえファブレてんな~」と思いましたね。もちろん冒頭とクライマックスの銃撃戦におけるガンアクションもかなりファブレていた。とにかく一つひとつの動作が速い。速すぎて何してるのかわからない部分も多々ありましたが。
でも、それは撮り方に問題があったためじゃないかと僕は思う。まず冒頭の、主人公が料亭でのヤクザの宴会に乱入して全員射殺するシークエンス。ただでさえヤクザの人数が多い上に、岡田准一の主観になると矢印だの数値だのの字幕がかぶってきてうっとうしくて仕方がない。これは主人公がパッと見ただけで相手の様々なデータを瞬時に分析できるという能力を表現するための演出のようなのだが、ここでは彼がいかに凄い殺し屋であるかを見せなければならないのに、画面がうるさすぎて何をしているのかよくわからないという大変に残念なことになっていた。おまけに、何故かどこかのバーで木村文乃テキーラをガバガバ飲んでいるシーンがカットバックされるという、余計としか言いようがないこともしており、マジでファブレてねえ!と思いました。
クライマックスでも、やっぱり敵のヤクザが多すぎて、特に狭い場所に追い詰められた岡田准一にヤクザたちが殺到するような絵面になると、上記のようにせっかくの彼の早業がよく見えないという極めてファブレてないことになっている。「もっと人を減らせばいいだろ! アホか!」と心の中で叫びながら観ましたよ。
結局何だかんだと不満ばかりを書き連ねることになってしまいましたが、だってファブレてなかったんだから仕方がない。でもこうやってファブレてる・ファブレてないと偉そうにジャッジしている僕ですが実は原作の漫画は1ページも読んだことがないんですよね。何のことはない、自分が一番ファブレてなかったというオチがついたところで終了です。