恋のクレイジーロード(2018)

製作国:日本
監督:白石晃士
脚本:白石晃士
編集:白石晃士
効果:白石晃士
出演:田中俊介宇野祥平/芦那すみれ/久保山智夏 他
★★☆☆☆


狂気の「おっさんずラブ

本作の上映時間が18分しかないからなのか、いざ渋谷アップリンクに観に行ってみたら、実は3本立てだったので、ちょっと得した気分になったんですが、1本目の『超エドガーケイシー』という短編でそんな気分は雲散霧消しました。何故よりによってこんなものを3本立ての一本に選んでしまったのか。白石監督、どうした? と心配になりましたよ。全然知らない奴らのホームパーティーで演じられた全く笑えない茶番の一部始終を映した動画みたいな作品で、何とも居たたまれない気持ちになりました。
その次に上映されたのが本作。ざっくり書くと、女装した宇野祥平が、どこかの田舎の一本道を走るバスの車内で、乗客を無差別殺戮しつつ、ワケありな感じのカップル(田中俊介&芦那すみれ)と強引に三角関係になるという作品。白石監督がいつか撮りたい念願の長編作品のためのパイロットフィルムという風情で、面白くなくはないんですが、何しろ18分ですから、上映直後には、とにかく尺が短くて物足りなかったなあという感想しかありませんでした。
ところが、三番目に上映された『メイキング・オブ・クレイジーロード』で、そもそもどうして本作が生まれたかという経緯が説明されるんですが、要するに白石監督が田中俊介に一目惚れして熱烈なラブコールをしたからなんですね。つまり一本丸ごと田中俊介への愛の結晶みたいなものだったのであって、それを踏まえると、これは実はアレだわ、「おっさんずラブ」だわ、と。まあ、そのドラマは見たことないんですが、そう捉え直しました。
だから本作での宇野祥平は、実は田中俊介に恋している白石監督が自分を投影しているキャラクターなのである、とすると失礼ながらキモさマックスですが、そう考えれば、設定こそいつものように異常極まりない白石晃士的狂人ワールドでありながら、内容は直球のラブストーリーだったことにもうなずけるというものです。もし望めるならアップグレードした長編版で観てみたいですね。もちろんその時は『メイキング・オブ・クレイジーロード』はともかく『超エドガーケイシー』の併映はナシでお願いします。