孤高の遠吠(2015)

製作国:日本
監督:小林勇貴
脚本:小林勇貴
音楽:小林優太/長嶌寛幸
出演:渡辺優津紀/神尾和希/日比野翔矢/増田亮太 他
★★★★☆


平成生まれの『グッドフェローズ

昨年の12月30日、渋谷アップリンクにて鑑賞。
観る前には「やっぱりヤンキー漫画みたいな映画なんじゃないの?」とかナメた予想をしていたのだが、完全に裏切られて絶句。これ、現代の日本を舞台にした不良少年版『グッドフェローズ』だと思う。4人の少年が、先輩から原付を買ったことをきっかけとして、殺伐とした不良たちの世界に否応なく引きずり込まれていく姿を恐ろしくリアルなタッチで描いていて、戦慄すると共に大変魅力的だと感じた。
もっとも、ところどころがどうにも「ちゃんとしていない」ことには正直戸惑った。4人の少年をはじめとする登場人物たちの見分けがつきにくかったり、台詞がよく聞き取れなかったり、どこだかわからない場所で誰だかわからない奴が急に出てきたりして、観ている途中でちょっと混乱してしまった。上映後に行われた脚本家・高橋洋氏と小林監督とのトークショーで、高橋氏が不明点についていろいろと質問してくれたお陰で何とか把握できたようなものだ。
また、4人の中でただ一人、あくまでバイクに乗ることにこだわり続けて、恐ろしい先輩たちにも逆らうことをいとわない少年が狂言まわしのような役どころとして設定されているのだが、せめてそのことをもっと観客にわかりやすくしたら良かったのではないか…などとも考えたのだが、そうやって「ちゃんとする」と、この映画の魅力が零れ落ちてしまうのではないかとも同時に思うのである。そういう稀有な、言ってみれば「ウェルメイドな映画」では絶対に描きだすことのできない面白さが、この作品には確かにあるのだ。そして、その面白さを生み出したのは、まるでラリー・クラークのような、不良少年たちを肯定も否定もせずに見つめる独特の視点と、商業映画では絶対にできない数々のヤバイことを、いとも軽々とやってしまっている大胆さに他ならない。
日本映画はつまらない、と何かにつけて言いたがる人にこそ是非観てほしい作品である。