007 スペクター(2015)

製作国:イギリス/アメリ
監督:サム・メンデス
脚本:ジョン・ローガンニール・パーヴィスロバート・ウェイド/ジェズ・バターワース
音楽:トーマス・ニューマン
出演:ダニエル・クレイグクリストフ・ヴァルツ/レア・セドゥ/モニカ・ベルッチ 他
初公開年月:2015/12/04
★★☆☆☆


平常営業の007

前作『スカイフォール』のラストからして、これは次作からは007の伝統的な路線に戻るというフラグを立てたくせえな〜とは思ったのだが、本作で本当にシレッと原点回帰していたので驚いた。ダニエル・クレイグ起用以来貫いてきた、世のアクション映画の一大潮流であるところの「リアル路線」をあっさり捨てて、007シリーズではおなじみの悪の組織「スペクター」を出してくるは、非現実的な装備満載のボンド・カーを走らせるは、荒唐無稽な秘密基地を登場させるは……と完全にオールド・ファン狙いの内容となっている。つまり本作の製作陣は、結局のところ007シリーズに「リアル路線」はなじまなかったと判断したのだろう。
しかし、同じダニエル・クレイグ主演作なのに、前作までとはあまりにもあからさまにトーンが違ってしまったのをマズイと思って、せめてストーリーとしては連続性を持たせたかったからなんだろうと推測するが、前3作の悪役たちは実は全員スペクターに操られていたのだという、これまたあからさまに後付けの設定を導入して、かなり無理やりに「完結編」的な位置づけの物語に持っていっているのがなかなか可笑しかった。別にそんなに律儀なことしなくても、前作までの流れなんかなかったことにしたって良かったんじゃないかと個人的には思うのだが。
で、感想だが「普通」という言葉しか出てこない。いや、まったくもってロジャー・ムーアピアース・ブロスナンが演じていた頃の、あの「平常営業の007」が帰ってきたというだけの映画である。ただ、ダニエル・クレイグには、その「平常営業の007」が全く似合わないということが判明したので、あのラストはそのまま現実にもなるのだろうなあ、と思う。さて、次回作はどうなるのか。007製作陣のお手並みを拝見したい。