ランボー/最後の戦場

「汝、殺すべし」と神は彼に言った

数々の戦いを生き延びてきたジョン・ランボーシルベスター・スタローン)は、現在はタイで蛇を捕まえて売ったりしながら、隠遁生活を送っていた。一方、隣国ミャンマーでは、軍事政権によって少数民族カレン族が残虐な迫害を受けていた。そんなある日、カレン族に援助物資を届けるため、アメリカからキリスト教徒の支援団体がやって来る。ボートで送って欲しいと依頼されたランボーは最初は断ったものの、支援団体のメンバー・サラ(ジュリー・ベンツ)の説得に心を動かされ、結局彼らを目的地に送り届ける。しかし数日後、彼らが政府軍に拉致された事実が判明。今度はその救出のために雇われた5人の傭兵たちを送ることになったランボーだったが……。


人には「天職」があるとよく言われる。それを見つけた人は幸せだとも。
我らがジョン・ランボーの天職は「殺人」である。彼がミャンマーに送っていった支援団体のメンバーが囚われの身になったことによる苦悩の中で、彼は、それをはっきりと自覚する。そして、自分が何をするべきかも理解する。
自分が為すべきことを知ったあとの彼の行動には一切迷いがない。
彼は殺す。素手で、手製のナイフで、50口径の重機関銃で。ためらいなく人間をただの肉塊に変えていく。その描写は、かつてなく苛烈で容赦がない。手足は飛び散り、首はちぎれ、臓物はぶちまけられ、ありとあらゆる人体破壊が繰り広げられる。
かつてのランボーは「怒り」に駆られて戦い、敵を殺していた。しかし今回、彼は初めて「仕事」として殺人を犯している。逆説的だが、だからこそ、これほど残虐に、無慈悲に殺す事ができたのだ。
そして、すべてが終わり、我が手によって死体と化した者たちが無数に横たわる水田を見下ろした彼の胸に去来したものは何だったろうか。
それはきっと「ひと仕事終えた満足感」だった。そして彼は、それを恥じただろう。しかし、それが「殺人」が天職だと気づいてしまった男の宿命なのだ。
彼は、遠からず「自分のような男を必要としてくれる土地」に再び向かうだろう。彼に帰る場所など、この地上にはないのである。
したがってラストシーンはランボーが、つかの間に見た夢なのだと僕は思う。