ハンティング・パーティー

はぐれジャーナリスト・トリオのぶらりボスニア地獄旅

第一線の戦場レポーターとして活躍していたサイモン(リチャード・ギア)は、ボスニア紛争の生中継中に急にキレてしまったために解雇されて以来、消息を絶っていた。その彼が、ボスニアに取材で訪れた、かつての相棒である戦場カメラマン・ダック(テレンス・ハワード)の前に突然姿を現わし、特ダネの話を持ちかける。それは、かつて「民族浄化」の名の下に行われた大虐殺の首謀者で、500万ドルの賞金首である大物戦犯「フォックス」の潜伏場所についての情報だった。サイモンの熱意に押し切られ、しぶしぶ同行を決意するダック。そこに、話を嗅ぎつけた新米プロデューサーのベン(ジェシー・アイゼンバーグ)も加わり、彼らは世紀のスクープを狙って危険な旅に出たのだが……。


この作品、冒頭に「『まさか』と思う部分が実話である」というテロップが出る。それくらい信じがたい話である。何しろ国連やNATOやCIAが、いまだに逮捕できないでいる戦犯(それには国際政治上の裏事情が関係しているのだが)に、彼らは、たった数日で接触に成功してしまうのだ。どうにも都合が良すぎる部分もあるのだが、何しろ実話なんだから仕方がない。まさに「現実は映画よりも奇なり」を地でいくストーリーである。
しかし、僕にとって一番面白く、また興味深かったのは、「戦場ジャーナリスト」という人種の(一般人から見たら)およそまともとは思えない生態がリアルに描かれている部分だった。たぶん戦場という死と隣り合わせの現場で仕事を続けるうちに、どんどん麻痺してきて、いわば「ジャーナリスト・ハイ」とでもいうような、自分の命を賭けてでも特ダネを掴みたいという「業」のようなものに突き動かされる状態になってしまうのだろう。そうでもなきゃ、「フォックスを取材する……という名目で自分たちで捕まえちまおう!」なんていう無謀極まりない計画を実行するワケがない。
その無茶な計画を極めて軽いノリと強引な行動で進めていくリチャード・ギアが実にかっこいい。彼に引きずられて他の二人も、口では文句を言いながらも、内心はどんどん前のめりになっていくのである。彼らが味わっていたであろう「死と隣り合わせの現場に身を置くがゆえの高揚感」、その場にいたら、さぞたまらんだろうなあと思う。まだ「男子心」が残っている人だったらよーくわかるはずだ。僕にはよーくわかった。
まあ、だからこそラストは、強制送還のために飛行機に乗せられそうになる瀬戸際に脱走して、滑走路をひたすら逃走していく三人のストップモーションで終わってくれたら良かったのに……。「こいつら、全然懲りてねえ」って感じで。