ぼくのエリ 200歳の少女

★★★★☆
邦題がだせえ。「モールス(原作小説のタイトル)」で良かったのに。
否応なく「運命の女」に出会ってしまい、人生が狂ってしまう男の物語というのは古今東西を問わず語られてきたが、本作は、主役の男女ともが12歳で、しかも少女の方はヴァンパイアだったというのがミソ。
主人公の少年・オスカーのベッドに裸で潜り込んできたり、オスカーのママの服を全裸の上から着たりして、ロリコン属性のない僕でもドキドキしました。まさにファム・ファタール。エリ、やばいっす。
ジャンルとしては、もちろん吸血鬼ものだがゴアシーンと言える場面は皆無。出血量は必要最小限。しかし非常に効果的な使い方をしており、どきっとさせられる。
クライマックスのプールのシークエンスは、ハリウッドだったらCG使いまくりの大殺戮ショーにしてしまうところだろうが、本作では、事態がまさに進行している最中に、水中で苦しんでいるオスカーの表情をカメラは捉え続け、その背景で起きつつあることの一端を垣間見せるという至って控え目な描写に留めているが、それが却ってプールの外でいかに凄惨な事態が起きているかということを観客に想像させ、震撼させる。
ラスト、二人だけの満ち足りた世界で幸福そうな表情を見せるオスカーだが、彼の未来は本作の最初から提示されている。彼は恐らく、エリに付き従って殺人を繰り返していた中年男と同じ運命を辿ることになるのだ。永遠に12歳のままであるエリにとっては大人に成長して庇護者となってくれるパートナーが常に必要であり、今回はオスカーが選ばれたに違いない……。しかし、それでもオスカーはきっと幸福なのだろう。