R18 LOVE CINEMA SHOWCASE Vol.4

3月1日から7日にかけて、ポレポレ東中野でレイトショー上映されたピンク映画の特集イベント「R18 〜」にて、観ることのできた4本の作品(『笑い虫』という作品は見逃しました)について、以下にレビューもどきを書きたいと思います。

『微風(かすかぜ)』(成人館公開題:『誘惑 あたしを食べて』)

江ノ島の近所にあるイタリアンレストランでバイトをしているアキ(吉沢明歩)は、一応彼氏はいるものの、妻を亡くした店長に密かに思いを寄せていた。そんなある日、彼氏が浮気をしていることが発覚。一方、店長にはアキの友人が強引なアタックを仕掛けており……といったストーリー。
とにかく吉沢明歩が可愛い。本当はあまり好きでもない男と、向こうが好きだと言ってくれるから何となく付き合っていて、でもバイト先の店長も気になるフリーターの女の子というあぶなっかしい役を自然体で演じていて違和感がない。等身大の役だからこその好演と言えるだろう。ラストも爽やかで後味が良い。長澤まさみ主演でリメイクしても(僕的には)全然問題ない青春ドラマの佳作。

『つまらないあたしのどうでもいい物語』(成人館公開題:『奴隷』)

平沢里菜子が演じる若竹梨奈は女子高生の時にSMに目覚め、上京して勤めた会社の社長に内なる「M性」を見抜かれて、社長の「奴隷」となり、様々なプレイに耽る生活を送る。しかしふとしたハプニングから、そんな生活も終わりを迎え、梨奈は結婚して平凡な主婦となるが、ある日、事業に失敗して変わり果てた社長と再会するや否や、またもや「ご主人様と奴隷」の関係に戻ってしまうのだった。
一見、主人公が自分の性癖のために転落していくドラマのように見えるが、実は主人公は終始変化していない。ただただ、その時々の自分の快楽に忠実に生きているだけなのである。SMという関係性の中で「ご主人様と奴隷」という役割を演じていても、本当に状況をコントロールしているのは、「奴隷」の立場の梨奈の方なのだ。もしかしたら、この世で最強の人間はマゾヒストなのかもしれない。

『ヒロ子とヒロシ』(成人館公開題:『痴漢電車 びんかん指先案内人』)

生まれつきの気の弱さから周囲に流されて生きてしまい、つまらない人生を送っている女・ヒロ子。傲慢に生きてきた結果、妻にも会社にも見捨てられ、死んだように生きている男・ヒロシ。全く接点のなかった二人の人生が、ある日、ヒロシがヒロ子に痴漢行為をはたらくことで交錯する。お互いの顔も知らないまま、毎日同じ時間の同じ車両で、痴漢し、痴漢されるうちに、二人の人生は徐々に変化し始める……。
「痴漢によって人生を生き直す活力を男と女が取り戻す」という、まさにピンク映画でしか起こり得ないマジックが、この作品では説得力を持って描かれる。それは、その前提として、ヒロ子とヒロシが「他人の温度」を切実に欲していることが観客に十分に伝わるからこそである。

『再会迷宮』(成人館公開題:『不倫同窓会 しざかり熟女』)

佐々木麻由子が演じる主人公は、もう若くない自分という現実に圧倒されて、女であることから自ら遠ざかろうとしてしまう、全くピンク映画的ではない女性である。そんな彼女が、性に奔放すぎる同級生やオカマになったバーのママらとの交流の中で徐々に「女である自分」を取り戻していく姿を、ちょっと脱線気味な演出も加えながら描いた作品。
主人公が、同窓会で再会した元彼と結ばれるシークエンスのしみじみしたリアル感が良かった。