川の底からこんにちは

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「しょうがないじゃないですか」が口癖で、自分を卑下しまくっている主人公は、しかし本音では自分を諦め切れていない。だから腹の中に鬱屈がたまっているのだ。腸内洗浄の場面で始まるのは、そういう意味。
ダメだ、中の下だ、どうせ大したことない人間なんだといくら自分に言い聞かせても、それでも自分を本当の意味で見限ることは、人間にはできない。自分を本当に捨てたかったら方法は自殺しかないが、死んでしまえば「捨てる主体である自分」も消滅してしまうので、結局は不可能なのである。
ではどうすればいいのか。主人公は煮詰まった挙句、斜め上にはじけることを選ぶ。主人公は突如として「どうせダメな人間なんだから…」という諦念に「がんばる!」という前向きな心性をアクロバチックに接続してしまう。世界が自分を否定しても、それを根拠に「逆に」生きてしまうこと。これこそ未来も希望も夢も語り得ない現在の我々にも共有可能なアティテュードなのである。