アメリカン・ギャングスター

良い奴、悪い奴、そして不真面目な奴

アメリカン・ギャングスター』というタイトルに反して、デンゼル・ワシントンが演じるフランク・ルーカスは全然「ギャングスター」らしくない。「商品」の生産者との直接取引によって、高品質な「商品」を、競争相手より安く消費者に提供することで成功し、その姿勢を崩そうとしなかった彼には、ギャングというより「優秀なビジネスマン」という形容が似合う。ただ、その「商品」が麻薬だっただけのことだ。
一方、もう一人の主役、ラッセル・クロウが演じるリッチー・ロバーツは、犯罪者から賄賂を受け取ることが当然とされていた当時の腐敗した警察内で、賄賂を受け取らない風変わりな刑事として仲間内から爪弾きにされていた。彼としては愚直なまでに「正しい警官」として生きようとしていただけだったのだが。
この、立場が正反対の二人の男が、お互いの仕事に勤勉に励んだ結果、ついに衝突するに至る。そして二人は当然のように意気投合する。何故か。彼らは立場こそ正反対だが、ひたすら誠実に仕事をしてきた似た者同士だったからだ。
したがって一見意外とも思える終盤の展開は必然的なものだった。自分の仕事を蔑ろにして、美味しい汁を吸っている奴は罰せられるべきだというのが、この映画の教訓なのである。