軍鶏 Shamo

His life as a dog.

16歳の少年、成嶋亮(ショーン・ユー)は、ある日、両親をナイフで惨殺し、少年院に送られる。唾棄すべき親殺しとして、院長(石橋凌)からも見放され、少年たちからリンチやいじめを受け続ける日々を送る亮。そんな時、彼は、終身刑となった伝説の空手家・黒川(フランシス・ン)と出会う。亮は生き抜くために黒川の指導の下、過酷な鍛錬を積む。刑期を終え、出所した亮は、総合格闘技大会「リーサル・ファイト」で活躍する最強の男・菅原直人(魔裟斗)の存在を知る。偶然邂逅した際、自分を見下した菅原に対し、激しい闘志を燃やす亮だったが……。


『ドッグ・バイト・ドッグ』に続くソイ・チェンのバイオレンス・アクション。前作は、いわば「闘犬」同士の凄惨な死闘を描いた物語だったが、本作では「負け犬」が死力を尽くして「闘犬」に成り上がるまでが語られる。/徹底的に虐められ、嬲られ、非人間的な扱いを受け続けると人間はどうなるか。死にたくなるか、自分を追い込んだ奴らを殺したくなるか、そのどちらかの心境になるだろう。亮は後者を選ぶ。空手を習得した彼はそれまで彼を虐げ続けてきた連中全員に復讐を果たす。/しかし出所しても、彼に対する世間の眼は冷たい。彼は常に見下され、軽蔑され続ける。だからこそ彼は「空手」という自分の牙を研ぎ続ける。いつか、彼を見下した奴ら全員に自分の存在を認めさせるために。「リーサル・ファイト」は所詮ショーアップされた格闘技大会だが、彼にとっての空手は、この世界で生き抜くためのかげがえのないスキルなのだ。/だから生きるために闘い続けてきた者と、金や名誉のために闘ってきた者との明暗がくっきりと現れるラストは爽快である。「ざまあみろ! 俺は生きてるぜ!」という亮の快哉が聞こえてくるようだ。/秋葉原でナイフを振り回す前に、「彼」に観てほしかった作品。