先生を流産させる会(2011)

製作国:日本
監督:内藤瑛亮
脚本:内藤瑛亮
出演:宮田亜紀/小林香織/高良弥夢/竹森菜々瀬/相場涼乃/室賀砂和希/大沼百合子 他
初公開年月:2012/05/26
★★★★☆


2012年の『エクソシスト

美しい少女やあどけない少年が、実はとんでもなく邪悪な精神の持ち主で、己の欲望のために次々に周囲の人々を殺していくのだが、何しろ外見は可愛いし、まだ子どもだからというので全く疑われず、その正体に気づいた人も全然信じてもらえず、結局何も解決されないままに、その子どもはヌケヌケとこれからも生きていくのでしょう……ドギャーン!(終劇)
――みたいな映画ってあるじゃないですか。
僕はもう、この手の話が嫌いで嫌いでしょうがないんです。生理的にダメっていうか。
それで本作も、そのパターンの話じゃねえの? と実は事前に予想していた訳です。狡猾極まりない女生徒グループに、か弱い女教師が精神的・肉体的に追い詰められていくんだけど、誰に訴えても取り合ってもらえず、どんどん孤立していき、そして悲惨な最期を……ドギャーン!(終劇)ってな感じかな、と。
ところが裏切られた、良い方向に。これ、『エクソシスト』ですよ。2012年の日本に突如としてリーガン&カラス神父が転生してきた。
もちろんリーガン=ミヅキ(小林香織)VSカラス神父=サワコ先生(宮田亜紀)という構図なんですが、カラス神父が悪魔に憑かれたリーガンに対して一歩も引かなかったように、サワコ先生もミヅキ率いる「先生を流産させる会」に対して全然引かないわけです。時にはビンタまで繰り出して、あるいは「流産させる会」の分断を図ったりして、断固として戦う。「お前ら、オトナの女を舐めるなよ!」っていう感じで。ここにシビレたね、僕は。もしかしたら日本ではもはや絶滅危惧種かもしれない、子どもに嫌われることを恐れず、善悪をわきまえないアホなガキの前には敢然と立ちふさがる「THE大人」としてサワコ先生が描かれていることに。
一方ミヅキは、そんなサワコ先生に、ひたすら圧倒的に理不尽な悪意で対抗する。何故、彼女はそれほどまでにサワコ先生を憎悪するのか。その動機が全く描かれないだけに、もしかすると「怪物度」ではリーガンより上かもしれない。リーガンが緑のゲロ吐いたり、首をクルクル回したりするのは悪魔に憑かれているからだとハッキリしているけど、ミヅキの場合は、その悪意の源が(推測はできるけど)理解できないから、より不気味です。
でも、サワコ先生はミヅキと対峙し続ける。逃げないし見捨てない。僕はこの展開に感動した。
そして、カラス神父が命を賭けて悪魔祓いを成し遂げたように、サワコ先生も大きな犠牲を払う。しかし、その後もミヅキにさしたる変化はないように描かれる。サワコ先生の献身は無駄だったのか?
ラストのミヅキの表情を見て、僕は彼女の中から「何かが祓われた」のだと思ったのだけれど、その解釈は、観客それぞれに任せられているんじゃないでしょうか。