ブラックサイト

意外と硬派な「ネット・サスペンス」

ネット犯罪専門部署に勤務するFBI特別捜査官ジェニファー(ダイアン・レイン)は、ある日、「killwithme.com」という奇妙なサイトを発見する。罠にかかった猫が衰弱していく様子をライブ中継しているそのサイトは、閉鎖しても、すぐにコピーが現れるようになっていた。やがて猫が死亡した後に画面に映し出されたのは、なんと拘束され、薬物を投与されている中年男性。しかも、サイトへのアクセス数が増えるごとに薬物の投与量が増えていく仕掛けが施されていた。好奇心に駆られた人々によって瞬く間にアクセス数は急増し、男性は死に至る。そしてその後も第二、第三の犠牲者が出る……。


僕はネットやコンピュータの技術に詳しくないので、実際にこういう犯罪が成立するのかどうか、わからない(現実的には、アクセスが殺到しすぎればサーバが落ちるんじゃないか?くらいの疑問は持つが)。それはともかく、この作品のキモは「人の死を見たいという人々の欲望によって、実際に人が死ぬ」という、まさに「ブラック」な発想である。
実際、ネット上では死体の画像やら事故の動画などを簡単に見つけることができるし、恐らくそういったデータを集めたサイトはアクセス数を稼ぐだろう。人は間違いなく「死」に惹かれる心性を持っている。この作品の犯人は、それを利用する訳である。
さて、一見、ネットに無茶苦茶詳しいサイコ・キラーの無差別な連続殺人かと思われた事件は、被害者(最初の猫も含めて)の意外な共通点が発見されたことで全く違う様相を浮かび上がらせる。犯人の動機も徐々に判明する。何故ネットでの公開殺人という手段を選んだのか。それは動機に密接に繋がっていた。この「動機」と「手段」との関係は、それなりに頷ける必然性がある。
ここまではいい。しかし、その後犯人をあっさりバラしてしまうのはいただけない。この作品の場合、犯人は最後のダイアン・レインとの対決まで伏せておいた方が効果的だったと思う(もちろん伏線をきちんと張っておいた上で)。そこが残念だった。
でも、今後ますます「いつでもどこでも何にでも」アクセスできるようになっていくと思われるネットへの警告をテーマとしたサスペンス映画の佳作ではあると思う。