2024年5月の鑑賞記録

『白熱(1949)』(ラオール・ウォルシュ レトロスペクティブ ウォルシュを観て死ね!)シネマヴェーラ渋谷 '24・5・3
『関心領域』新宿ピカデリー '24・5・29

『映画の生体解剖―恐怖と恍惚のシネマガイド』(稲生 平太郎・高橋 洋/洋泉社)という、800本くらいの映画について触れているすごい本があって、僕は、この本の中で紹介されているという理由で、これまでに何本かの作品を観ていますが『白熱』もそのうちの一本です。
主人公のジェームズ・キャグニーは強盗団のボスで、邪魔だと思えば仲間でも容赦なく殺す冷酷非情な男であり、痛みのあまり失神してしまうほどの頭痛持ちであり、さらに強度のマザコンというキャラクター。この男と、彼を執拗に追う警察との攻防が終始描かれます。
映画として面白いのはもちろんなんですが、さらに僕が感心したのは、全然「古い」と感じさせないところ。時代だけ2024年に移して、同じ内容のリメイクを作っても通用すると思う。さすがに冒頭の列車強盗シーンは今時無理だと思うので、変更しなければならないとは思いますが。
なぜ古さを感じさせないのかと言えば、製作された時代に依拠した表現になっていないから。主人公の、現代風に言えばサイコパスチックな造形をはじめ、キャグニーの妻や仲間による裏切り、キャグニーの復讐、強盗団と警察との駆け引きなど、「ギャング映画」としての、時代を超えて普遍的な要素ばかりでプロットが組み立てられている。だから古びない。
そして何といってもクライマックスが突き抜けすぎ。当時としてはだいぶ異常なシーンだったと思うんですが、今観てもやはり異常。だからこそ時代を超えた作品になったと思います。