片腕マシンガール

ファスター・マシンガール・キル・キル!

両親が殺人容疑をかけられ、自殺したという過酷な過去を持つ女子高生アミ(八代みなせ)は、弟のユウ(川村亮介)と支え合って生きていた。しかしある日、ユウは容赦ないイジメのために死んでしまう。警察は自殺と断定したが、納得できないアミは、服部半蔵の血を受け継ぐヤクザ「木村組」の一人息子・翔(西原信裕)がイジメの主犯であることを突き止める。弟の復讐を誓ったアミは、単身「木村組」へと向かうが、逆に捕まってしまい、残忍な拷問の末に片腕を失ってしまう……。


一見、いかにもアメリカ人が好みそうなフェイク・ジャパンワールドを舞台にした漫画的スプラッタ・アクションに思えるが、それはあくまでも表層にすぎない。その実態は「愛と憎悪」についての井口昇の「思想」を表明した実に真摯な作品なのである。
この映画内の世界はひとつのルールに支配されている。「より強い憎悪を持つ者が生き残る」という極めてシンプルなルールだ。
最も象徴的なのは、主人公を襲って返り討ちに遭い、殺された刺客の親たちが子供の復讐のために、主人公たちの前に立ちふさがるという後半の展開である。まさに同種の「憎悪」を抱いた者同士が激しく衝突する訳である。
しかし主人公は、彼らが自らの子供たちを愛するよりも更に強く、激しく弟を愛していたが故に、誰よりも強烈な憎悪を獲得していた。だからこそ彼女は全ての敵を殺して、ただ一人生き残るのだ。そう、最強の「愛」に裏打ちされた「憎悪」こそが最強なのである。「愛」は時に人を鬼にする。それがこの映画のテーマなのだ。
……てな小理屈をひねくり回すまでもなく、なんにも考えずに観ても問答無用に痛快なエンターテイメント作品なので、未見の人には是非鑑賞をお勧めする。特に現役もしくは元いじめられっ子だった方は、より楽しめること間違いなしである。