2024年6月の鑑賞記録

劇場

『マッドマックス:フュリオサ』(IMAX)T・ジョイPRINCE品川 '24・6・2
『ソイレント・グリーン 《デジタル・リマスター版》』シネマート新宿 '24・6・11
『他人の顔』新文芸坐 '24・6・14
蛇の道(2024)』新宿ピカデリー '24・6・19

配信

『Q2:7テイク100 - Take100』フェイクドキュメンタリー「Q」YouTube)'24・6・22

『ソイレント・グリーン』といえば、その原料は実は……というオチの部分ばかりが言及されがちだが、僕にとっては本作が描く2022年の未来社会のディテールが興味深かった。
例えば主人公のソーン刑事(チャールトン・ヘストン)は「本(ブック)」という階級に属するソルという老人と同居している。「本」は資料検索のエキスパートで、膨大な資料の中から依頼主が知りたいことを探し出すのが仕事。いわば「人間サーチエンジン」である。また「家具(ファニチャー)」と呼ばれる階級に属する女たちは、主に富裕層の住むマンションの「部屋付き家具」として扱われており、住人の身の回りの世話から性処理まで担当する。なんとも『家畜人ヤプー』的である。
「本」も「家具」も自分の能力や肉体を差し出す代わりに住まいを得ているのだが、それはこの世界では何よりも住居が貴重だからだ。人口が超過剰なために、膨大な数の人々がホームレス化してしまっているのである。その上、環境破壊による恐るべき酷暑に苦しめられ、生鮮食料品は希少で高価なので、富裕層しか入手できない。そんな地獄のような世界が本作の背景にはある。
こんな世界で生きることに嫌気がさした高齢者のためには「ホーム」という安楽死のための施設がある。受付で名前を書いて、処置室に案内され、かつての美しい地球の映像を見ながら20分間であの世行き。ものすごく簡略化されていて、それがどうにも恐ろしい。
上記の本作の設定は、1973年の公開当時では単なるフィクションに過ぎなかったが、2024年7月現在、改めて考えてみると、どうも現実味を帯びてきているような気がする。「本」「家具」ほど極端ではないが、人間を職業・職能で選別するという価値観はすでに普遍的だし、安楽死も身近に差し迫った問題として捉えられつつある。そして、何よりもこの体温なみの暑さ! 世界は順調に『ソイレント・グリーン』化しつつあるのではないだろうか。