マイル22(2018)

製作国:アメリ
監督:ピーター・バーグ
脚本:リー・カーペンター
音楽:ジェフ・ルッソ
出演:マーク・ウォールバーグ/ローレン・コーハン/イコ・ウワイス/ジョン・マルコヴィッチ 他
★★★☆☆


因果は巡るよ、どこまでも

アバンタイトルで、さっそくCIAの秘密部隊「オーバーウォッチ」の、マーク・ウォールバーグが率いる実働チームが、ロシアのテロリストのアジトを急襲する様が描かれるんですが、これが燃える。ジョン・マルコヴィッチが統括する後衛チームが無人攻撃機とネットを駆使してバックアップする中、秒刻みで進行する作戦。後衛チームは、恐らくウォールバーグたちの体内に埋め込まれたチップによって呼吸数や心拍数をモニタリングし、それと同時にアジト内に仕掛けられたカメラや無人攻撃機からの映像によって作戦の進行状況をリアルタイムで把握。さらに現場で採取したテロリストたちの歯形や指紋から個人情報をピックアップしたり、彼らによってアジトを爆破されると周辺の住人の通報を傍受したりと、あとは各メンバーが電脳化したら、もう完全に「攻殻機動隊」ですやん、というハイテクぶりを見せつけられて圧倒されました。いや、これがどこまでリアルなのかはわかりませんが、何しろこの手の作品ばかり手掛けてきたピーター・バーグですから、案外マジにこうなのかもしれないと思わせます。
で、本筋なんですが、アジアの架空の国を舞台に、「オーバーウォッチ」が再び召集され、CIAが行方を追っていた、大規模なテロを可能にする放射性物質セシウムの在処を知る男であるイコ・ウワイスの護送作戦が開始されることになる。目指す空港まではわずか22マイル(約35㎞)。しかし自らの命を惜しまずにイコ・ウワイスを殺そうと迫ってくる無数の敵に行く手を阻まれ、チームの面々は次々に殉職。頼みの後衛チームも異国が舞台のためか、いまいち役に立たない。果たしてマーク・ウォールバーグは任務を果たせるのか?という展開になります。
ところが最後の最後でどんでん返しが起こり、完全にマーク・ウォールバーグも観客も騙されていたことが判明するんですね。もちろん、どのように騙されたのかについては言及しませんが、こういうオチに持っていったピーター・バーグの意図は何なのかと考えると、それは実は「憂国」ということではないかと思われるんですよ。
実際、アメリカは本作中の「オーバーウォッチ」のようなハイテクノロジー・バイオレンスでもって、アフガニスタンイラクなどでアメリカに歯向かう奴らを片っ端からぶん殴っているわけじゃないですか。で、その結果として、あの9・11のように振るった暴力がそのまま自分に返ってくるかもしれないわけです。だから殴り続けるだけじゃ根本的な解決にはならないのは、もはや自明なのにいったい俺たちは何をやっているんだ?というピーター・バーグの焦燥感が感じられる、そんな作品でした。