クソすばらしいこの世界(2013)

製作国:日本
監督:朝倉加葉子
脚本:朝倉加葉子
音楽:森野宣彦
出演:キム・コッビ/大畠奈菜子/北村昭博 他
初公開年月:2013/06/08
★★☆☆☆


酢豚にパイナップル

突然だが、あなたは酢豚にパイナップルが入ってるのを許せる人? 許せない人? 僕は許せない派である。絶対に許さない。
酢豚は中華料理で、パイナップルは果物だ。別々に食べる分には何も問題はないけれど、これを一緒にする意味がわからない。「いや、おいしいよ?」という人だってもちろんいるだろうが、これは嗜好の問題なので、どっちが間違ってるとかいう話ではない。とにかく僕はダメだというだけのことだ。
ところで、この『クソすば』だが、実は『悪魔のいけにえ』と、ある日本映画の名作(と呼ばれる部類に属する作品)のミクスチャーとでもいうべき作品である。やや突っ込んで書くと、L.A.のはずれの田舎を舞台に、サイコキラーなホワイトトラッシュ兄弟によって、些細な偶然から日本人留学生グループ(含む韓国人留学生一名)が命を狙われる羽目になるという正統派スラッシャー・ホラー的状況下で、突如として「おれがおまえでおまえがおれで」的な現象が何の伏線もなく発生するのである(正直もう少しで吹き出すところだった)。
僕は、ここからブラックコメディに転調するのかな、と思った。いや、コレ絶対笑わすためにやってるんだろうと。しかし、これほどデタラメなことが起こっても、ストーリーは相変わらず、生真面目にスラッシャー・ホラーとして語られ続け、そのままエンディングを迎えてしまうのだった。
もちろん、ある典型的なシチュエーションに、観客が予想もしないようなアイデアをぶちこんで、次元の違う世界に映画全体を持っていくという方法論はアリである。アリではあるが、今回の試みは、僕には「酢豚にパイナップル」同様「ナシ」と判定せざるを得ない。あまりにも食い合わせが悪すぎるとしか思えないのだった。殺人シーンが、どれも力が入っていて素晴らしかっただけに、極めて惜しい。