アベンジャーズ(2012)

製作国:アメリ
監督:ジョス・ウェドン
原案:ザック・ペンジョス・ウェドン
脚本:ジョス・ウェドン
音楽:アラン・シルヴェストリ
出演:ロバート・ダウニー・Jr/クリス・エヴァンススカーレット・ヨハンソンサミュエル・L・ジャクソン 他
初公開年月:2012/08/14
★★★☆☆


「正義」が信用できない時代の健全なヒーローたち

原作のコミックは全く読んでいない上に、関連作品は『アイアンマン』と『アイアンマン2』以外は未見の状態で書いております。ネタバレもあります。以上にご注意の上、お読みください。


それにしても暑い。
去年も暑かったが、今年はその倍、いや十倍は暑い感じがする。
あまりの暑さに、とうとう寝ている間に脳が溶け、耳から流れ落ちて蒸発してしまったようで、まともにモノが考えられないので、脳を機能させなくても十分楽しめる映画を観ようと、僕は白昼の歌舞伎町をゾンビのごとくヨロヨロと歩いて、久しぶりの新宿ミラノにたどり着き、本作を鑑賞した。
ところが予想に反してこの作品、結構考えさせられた。
お話自体はいたって単純で、サミュエル・L・ジャクソン(以下サミュL)が長官を務める秘密組織「シールド」の研究施設で「キューブ」なる物体をいじくりまわしていたところをソー(クリス・ヘムズワース)の弟・ロキ(トム・ヒドルストン)に強奪されてしまったので「こりゃ地球の危機だ!」ということになり、サミュLはかねてから企んでいた「アベンジャーズ計画」をついに発動させることを決意する…というものなんだが、この肝心の計画が全然うまいこと発動しないのが面白い。
というのも、アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)をはじめ、主要なメンバーが全然サミュLを信用しないのである。そして更に笑うことにはサミュLの兄貴にはホントにろくでもない裏があったのだった。実は「シールド」は例のキューブで大量破壊兵器を作ろうとしていたのである。この件をロバート・ダウニー・Jrに追求されるとサミュLはしれっとした顔をして、それは彼のせいだとか言ってソーを指さす。つまりソー達のような地球外生命体の存在が確認された以上、彼らからの侵略に備える必要があるので、抑止力としての兵器を作っていたのだという理屈である。それをきっかけに彼らは激論を交わし始める。
このシークエンスを観ながら、いや、健全な人たち(人じゃなくて神もまじってるけど)だなーとイヤミでも何でもなく思った。だいたい9・11以降「地球の危機だから」とか文句のつけようのない「正義」の御旗を振りかざして他人を扇動しようとする奴ほど信用ならない人間はいないというのは常識である。その常識をアイアンマンやハルクが持ち合わせているということをちゃんと描くというのは実に興味深いなーと思ったのである。
しかし、ついにアベンジャーズが結成されないままに終わってしまったら、僕はいいけど他の世界中の観客は絶対満足しないので、結局ヒーローたちはアベンジャーズとして共闘するに至るわけだが、そのきっかけが、ある一人の男の死であるというところにグッときた。所詮浪花節なワケだけど、何の疑いも持たずに「正義」に乗っかっちゃうより全然上等である。
で、「キューブ」の力によって、いよいよロキ率いるエイリアン軍団がニューヨークに攻めてくるのだが、そこからラストまでは、ハッキリ言って『トランスフォーマー』で散々観たようなシーンばかりが延々と続いて辛かった。ただハルクがロキを全くシャレにならない感じでギッタギタにボコるシーンは声出して笑ったが。
まあ、結論としては意外とイケるから観てみれば? という感じ。