3時10分、決断のとき

チャンベールに初めて泣かされました

監督:ジェームズ・マンゴールド
脚本:ハルステッド・ウェルズ /マイケル・ブラント /デレク・ハース
音楽:マルコ・ベルトラミ
出演:ラッセル・クロウクリスチャン・ベイルピーター・フォンダ 他
ストーリー:南北戦争で片足が不自由になったダン・エヴァンス(クリスチャン・ベイル)は妻と2人の息子と共にアリゾナで小さな牧場を営んでいた。ある日、町を訪れたダンは、悪名高い強盗団のボス、ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)が保安官に逮捕される現場に居合わせる。ウェイドは裁判所のあるユマへ連行されることになるが、そのためにはユマ行きの列車が出発する3日後の午後3時10分までにコンテンションの駅に送り届けなければならない。ダンは借金返済のために護送役に名乗りを上げ、危険な旅に出た……。


悪のカリスマ的な魅力にあふれたラッセル・クロウに対して、実直なだけで全く華がないクリスチャン・ベイル(以下チャンベール)。この対称的な関係は、終盤まで変わることがない。護送途中の見せ場という見せ場は、ことごとくラッセル・クロウに持って行かれ、対するチャンベールはと言えば、勝手についてきてしまった自分の息子にまで小馬鹿にされる始末。
それでもコンテンションに何とかたどり着いたのもつかの間、ボスを奪回しようとする強盗団の差し金により、コンテンションの保安官は護衛を拒否し、おまけに町のならず者たちが金目当てに強盗団側に回り、チャンベールたちがたてこもるホテルを包囲するという展開に至って、僕はついにチャンベールの見せ場が来ると予想した。チャンベールが南北戦争時代は狙撃兵として鳴らしていたという伏線がついに実を結ぶ時が来たと。これまでの冴えなさすぎるオヤジぶりが信じられないような狙撃の腕前を発揮して、次々と敵を撃ち倒していくチャンベール……そんな場面がこれから展開するに違いない。
しかし、チャンベールは、予想以上にどこまでも生真面目なだけのオヤジだった。彼が採用した作戦は、単に駅まで建物の陰を歩いて移動するというだけのもの。作戦まで実直。ところが、この意地だけで押し通したような作戦が奇跡的に成功するのだが……そこから先は思い出すと眼から汗が出るので書けません。ただひとつ言えるのは、実直さがカリスマ性についに勝利するということ。真面目が取り柄の日本のお父さんたちにお薦めの傑作です。