ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー

「Can't Smile Without You」は名曲です(泣きながら)

監督: ギレルモ・デル・トロ
脚本: ギレルモ・デル・トロ
音楽: ダニー・エルフマン
出演: ロン・パールマンセルマ・ブレアダグ・ジョーンズ
ストーリー:アメリカ政府の極秘機関「超常現象捜査防衛局(BPRD)」のエージェントとして人間のために日々、魔界の者たちと戦うヘルボーイロン・パールマン)は、近頃何故か不機嫌な、同僚であり恋人でもあるリズ(セルマ・ブレア)との関係に悩む日々を送っていた。そんなある夜、マンハッタンの古美術品オークション会場が妖精に襲撃される事件が発生。そこで得た手がかりからヘルボーイたちはニューヨークの地下にある、妖精や魔物が跋扈する「トロールの市場」に潜入する。そして、エルフ族のヌアダ王子(ルーク・ゴス)が、人類を滅ぼすために、遥かな太古に造られたゴールデン・アーミーの復活を企んでいることを知った彼らは、ヌアダ王子に立ち向かうことになるのだったが……。


意外にも心温まる作品である。単なる「アメコミ・アクション」ではなく、堂々たる恋愛映画でもあるのだ。/メインの物語は、もちろん人類に敵対するヌアダ王子とヘルボーイたちとの攻防なのだが、そこにヘルボーイとリズとの恋愛模様と、「超常現象捜査防衛局」のメンバーで、半魚人のエイブ(ダグ・ジョーンズ )とヌアダ王子の妹・ヌアラ王女(アンナ・ウォルトン)の淡い恋が絡む。この恋愛がらみの描写がいいのよ〜(おすぎ風)。/リズとの関係に悩むヘルボーイと、王女への想いを言い出しかねて(何しろ自分は半魚人だし)悶々とするエイブが、ビールを飲みつつ、バリー・マニロウ(!)の「Can't Smile Without You」を聴きながら口ずさむシーンは本作随一の名場面。ブサメンで叶わぬ恋に悩む貴男なら感情移入のあまり号泣必至である。/それはともかく興味深いことに、この作品は、宮崎駿の『もののけ姫』と同様のテーマを掲げている。地球環境を破壊し続けても「心に穴が開いていて飽くことを知らない」人類と、そんな人類を許せず、滅ぼそうとするエルフ族のヌアダ王子と、いったいどちらが「悪」なのか? それでもヘルボーイは人類を守るのか? 今回、彼はその選択を迫られる。自らも人間以外の存在である彼が最終的にどんな選択をするのか。それは観てのお楽しみということで。/確実なことは、ギレルモ・デル・トロは完全に「魔界寄り」の人だということだ。それが如実に表れるのは、ヘルボーイと巨大な「森の精霊」(この「森の精霊」にも『もののけ姫』の影響が感じられる)との戦いのシークエンスである。苦戦の末に「森の精霊」を倒し、ついでに赤ん坊まで救ったのに、彼はその容姿から怪物扱いされ、罵声を浴びせられる。異形の者を差別し、排除しようとする人間の醜さが、ここでは描かれている。/対照的にヘルボーイをはじめ本作に大量に登場するクリーチャーたちは、(たとえ悪役でも)愛情を込めて描かれる。このクリーチャーたちのデザインがそれぞれ素晴らしい。何も考えずに画面を眺めているだけでも楽しくなる。/特撮・アメコミおたくのみならず、カップルにもお勧め。前作を復習してから行くと、もっと楽しめます。