ワールド・オブ・ライズ

最大の「嘘」はこの映画のキャッチコピー

爆弾テロを世界各地で起こしている国際的テロ組織のリーダーを捕獲するため、現場で危険な任務に体を張っているCIA工作員ロジャー・フェリス(レオナルド・ディカプリオ)。一方、彼の上司エド・ホフマン(ラッセル・クロウ)はもっぱらアメリカの本部や自宅などから指示を送るのみだった。そんな中、フェリスはイラクで組織の極秘資料を手に入れ、資料から得た情報のもと、ヨルダンへ向かうのだが……。


観終わって何がびっくりしたかって、この作品、ディカプリオとラッセル・クロウの「どっちの嘘が世界を救うのか」というキャッチコピーが付いているのに、なんと、どっちも「世界を救わない」のである。テロ組織のリーダーをまんまと捕まえるのはヨルダン情報局であり、二人は単なる役立たずのままで終わるのだ。/劇中ではCIAが、如何にハイテクに頼った諜報活動を繰り広げているのかがたっぷり描かれる。象徴的なのは、遥か上空からの無人偵察機による地上の監視だ。ディカプリオが地上で現地の情報提供者と交渉したり、テロ組織のアジトで銃撃戦を繰り広げたりしているのを、クロウはCIA本部で、文字通り「鳥瞰」している。ディカプリオの行動は全てクロウの監視下にあり、ディカプリオは手足に過ぎないのだ。しかし、現場でなければわからない事情・通じない論理というものは常にある。現場を知らないクロウにはそれが理解できず、ディカプリオを苛立たせる。こんなコンビじゃ、本来うまくいく作戦もうまくいく訳がない。案の定、彼らは失敗に次ぐ失敗を重ねていく。/後半、彼らは世界を相手にした大ペテンとでもいうべき作戦を決行するのだが、これまた大失敗。ディカプリオは危うくテロ組織によって首チョンパすれすれのところまで追い込まれるのだが、ヨルダン情報局の昔ながらのレトロなやり方によって、辛くも救われるのだった。/ハイテクばりばりのCIAが古典的な手段をとったヨルダン情報局に出し抜かれ、結局クロウもディカプリオも全くいいとこなし。本物のCIA局員はもちろんアメリカ人が観たら絶対不愉快になるに違いないが、この作品はアメリカ映画なのだった。なんだかんだ言っても懐深いなあ、アメリカ。