WALL・E/ウォーリー

「彼」の純愛っぷりに「全俺」が号泣

人類が宇宙へと去り、無人となった地球。そこでは700年間、一体のゴミ処理用ロボット「ウォーリー」(声:ベン・バート)が人間たちの残したゴミを独り黙々と片付けていた。そんなウォーリーの前にある日、宇宙から超高性能ロボット「イヴ」(声:エリッサ・ナイト)が現われる。彼女の気を惹こうとしたウォーリーは発見したばかりの「植物」を見せるがその瞬間、「植物」を体内に回収したイヴは動かなくなり、宇宙船にさらわれてしまう。ウォーリーはイヴを追って、宇宙船の船体に掴まり、未知なる宇宙へ旅立つのだが……。


地球上にただ一人残されたその男は気が遠くなるほどの長い時間、単純な肉体労働を続けてきた。楽しみと言えば、仕事が終わった後に、古いミュージカル映画のビデオを観ること。男のささやかな夢は、いつかその映画の主人公たちのように「手を握り合う」ことだった。
そんなある日、突然訪れた宇宙船から、まったく思いがけず一人の女が男の前に現れる。ずっと孤独だった男はたちまち恋に落ちる。しかし女はつれない。いくら気を惹こうとしても相手にもしてくれない。そして、現れた時と同様に、突然彼女は連れ去られそうになる。
性格はいいが頭はやや弱いその男は、後先を考えずに宇宙船に乗り込む。その女の手を握りしめたい。ただそれだけのために……。
−−というストーリーを、まるでおもちゃのようにシンプルなデザインのロボットたちが演じる。おまけに最初の30分間には、まともな台詞さえない(そもそもウォーリーもイヴも名前を名乗ることしかできない)。にもかかわらず、彼が「イヴ」に惹かれていくこと、つれなくされて悲しく思っていること、それでもどうしようもなく「愛してしまっている」こと、そしてイヴもだんだんウォーリーに興味を示していくこと……などなどが恐ろしく明確に伝わってくるのである。
これはものスゴイことだ。なみなみならぬ演出テクニックである。アニメの演出家を目指す人ならば必見だ。
惜しむらくは、ついに人間が登場しないまま、映画が終わってくれていたら、まさに画期的な作品となって、スタンディング・オベーションものだったのだが……。いや、しかし涙こそ流さなかったものの、心の中では僕は感動して泣いていた。今年最後に観た映画が本作で良かったという気持ちでいっぱいです(「ザブングル」の加藤の表情で)!