ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン!

キマジメなヤツほどキレたら怖い

ロンドンで活躍していた勤勉かつ有能な警察官、ニコラス・エンジェル巡査(サイモン・ペッグ)は、あまりにも優秀すぎたがゆえに上司たちの反感を買い、「イギリス一安全な村」サンドフォードの警察署に左遷されてしまう。おまけに無理やり組まされた相棒のダニー(ニック・フロスト)はトロい上に無類の警察映画オタクで、生真面目なニコラスとは全く噛み合わない。そんな中、村で明らかに不審な死亡事故が相次いで発生する。ところが警察署の面々も町の人々も単なる事故だと決めつけるばかり。仕方なく、単独で捜査を始めたニコラスだったが……。


もう、この映画の面白さについては、さんざんいろいろな所で語られているので、ここでは僕的にグッときた側面について書きたい。
主人公ニコラスは、ただ真面目に仕事をしていただけなのに、くだらない周囲の嫉妬のためにド田舎に左遷されてしまった哀れな男である。
この境遇だけでも激怒モノなのに、誰がどう見ても殺人を疑う「事故」が村で続発しても誰も彼の意見に耳を貸さない。それどころかキ●ガイ扱いまでされる始末。恐らく彼の怒りは加速度的に募っていっただろう。
それでも地道な捜査の末に、ついに彼は、連続変死事件の真犯人であり、この村を陰から支配する「組織」の存在を知るに至るが、結局は村を追放される羽目に。……事ここに至って彼はついにキレたに違いない。
その証拠に、「組織」に引導を渡すため、村に舞い戻った彼が、まずやってのけた事は「組織」の一員であるババアの顔面にモロにドロップキックをかます事だったのである!
主役の警官が老婆の顔面を足で蹴る(しかも飛び蹴り)などというシーンが、映画史上かつてあっただろうか? しかし、こうして文章で書くと単なる老人虐待みたいに見えるが、これが途方もなく痛快なシーンなのだ。思わず「イエス!」と心の中で叫んだね、僕は。
そして、このシーンから映画のタガが(ニコラスの理性と共に)一気に外れ、猛烈にデタラメな展開になっていくのが超快感! 「組織」の理不尽で陰湿な、陰からの管理によって築かれた偽りの平穏を、めちゃめちゃにキレまくった警官の怒りが、完膚無きまでに破壊する! この爽快感がたまらない!
このクライマックスに到達するまでが、ちょっと長すぎると思うんだが、我慢に我慢を重ねた挙げ句に、ついに爆発するニコラスに己をシンクロさせて観ると、すっごく気持ちいい。
とにかく一見の価値アリ。