JUNO/ジュノ

ポーリー・ブリーカー君への手紙

個性的な16歳の高校生、ジュノ(エレン・ペイジ)は、同級生のポーリー(マイケル・セラ)と興味本位でした、ただ一度のセックスで、思いがけず妊娠してしまう。動揺しつつも、両親には内緒で中絶することを決意したジュノだったが、病院を目の前にして気持ちが揺らぎ、中絶をやめることにする。子供を産んでから養子に出すことにしたジュノは、親友のリア(オリヴィア・サルビー)と共にタウン情報誌で里親探しを始めるが……。


親愛なる(いや、嘘だ)ポーリー・ブリーカー君へ。
いきなりだが、まず君には「おめでとう」と言いたい。君は自分が如何に幸運な男かわかっているだろうか?
恐らく全然理解できていないと思うので、僕が頭の弱い君にも、よくわかるように説明してあげよう。
君がうっかり中出ししてしまったために、お腹がふくらんでしまった、あのジュノという女の子は、少なくとも君の1万倍は自立した人間だった。君は、まずその奇跡的な事実に感謝すべきだ。
彼女は、君に「妊娠した」という事実を告げただけで、何も要求しなかった。自分の体に宿った子供をどうすべきかを考え、その結果、養子に出すことに決め、里親候補の夫婦を探し出し、交渉し、そして出産し、無事に里親に譲り渡すまで、全てを彼女は(周囲の協力も求めながらも)一人でやってのけた。
その間、君がやっていたことと言えば、アホみたいな顔してトラックをぐるぐる走り回っていただけだ。僕は知ってるけど、君はジュノを全然助けなかったよな。よく考えれば、何かできることがあったんじゃないのか? 他の女の子とパーティーなんかに行ってる場合か? 僕がジュノのパパだったら君をどんな目に遭わせると思う? 君の短小ペニスをチェーンソーで切断して、君のいつも開きっぱなしの口に放り込んで、ガムテープでふさいでやるくらいのことは平気でやるね。しかしジュノのパパは心の広い人物だった。君はこのことにも感謝しなくちゃいけない。
しかも、そんなろくでなしのボンクラ野郎である君なのに、こともあろうにジュノは恋人に選んでしまった。こんなことってあるだろうか。僕がジュノのパパならカート・コバーンみたいに(もちろん君を射殺してから)ショットガンで自殺するところだが、何しろ彼は心が広い人物だから、君はラストシーンでジュノとすっかり恋人ヅラしてデュエットを楽しめるってワケだ。
どうだろう。如何に自分がラッキーだったかわかったかな? 君は16歳の少女を妊娠させたのに、何の責任も負わずに済んだ上に、その彼女の彼氏になれたんだ。本当に羨ましいよ。できるものなら君の立場になりたいね。
しかし、だ。そう都合のいいことばかり起こらないのが人生だ。賭けてもいいけど君は遠からずジュノに振られるだろう。ひとりで人生を歩んでいけることを知ってしまった彼女にとって、君はパートナーとしては役不足すぎるからだ。
まあ、短い間だろうけど、せいぜい彼女の恋人であることを楽しむんだな。それから次からは絶対ゴム着けろ。今度妊娠させたら、いくら心が広いあのパパでもチェーンソーを持って君を訪問すると思うぜ。じゃあな(中指を立てつつ)。